春の風 | かな☆気まぐれ日記

春の風

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明け方頃、母は一筋の涙を流し大きく息を吸ったまま静かに逝った。私は母の手を握り声をかけながら母を見送った。医師がまるでテレビドラマの様に臨終時間とお悔やみを述べ、看護師達がエンジェルセットを持ち「ご遺族の方は外へ」と言った。しばらくして再び病室へ呼ばれ母の元へ行ったら綺麗になった母がいた。癌によってリンパと血液の流れが悪くなり母の顔と上半身は別人の様に腫れていたが、なぜか腫れがひいていた。妹と二人母の使っていた物を袋に入れ帰る準備などをしているうちに朝日が病室に入ってきた。その日はとても天気がよく窓を開けると四月の春の風が入りこんできた。「ママ、天気いいね。家に帰ろうね」
去年の12月病状が悪化して入院した母は辛い治療に耐えながら春がくるのを待ち望んでいた。春までには家に帰る。 それが母の目標だった。週末、子供達を連れてお見舞いに行くととても喜んでいた母。本当はもっと行ってあげたかった、夜一人の病室はどんなに寂しかったのだろう、今は後悔ばかりが胸に押し寄せる。エレベーター前で寂しそうに手を振る母。私達が帰った後母はどんな気持ちでベッドの上にいたのだろう。
人は必ず死ぬ。
どんな人にも終わりが来る。
だけど皆死に対してどこか他人事でまだまだ先の事だと心の中で思ってはいないだろうか。
私も母が病に倒れ、死んだ時まで死とは遠く先の事だと思っていた。
でも誰しも明日どうなるかなんてわからない。
今日、やりたい事をやり感謝して愛する人に愛を伝える。とても大切な事だと思った。母が昨日亡くなった者がどうしても生きたかった今日を私は生きている。
今、命ある事に感謝をして一瞬一瞬を大切にしたい。
いつか必ずくる最後の日まで。

暖かい春の風は私に必ず母を思い出させてくれる。
お洒落やお出掛けが大好きだった母、何より家族が大好きだった母。
今も春の風にのって私達を見守っているだろう。