埼玉県に住んでいたころ、図書館で何気なく手にとったCDの名前が「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」だった。とくに期待もせず借りてみたのだが、聴いてみたら気に入ってしまって、何度も繰り返し借りていた。ただ聴くだけで、説明書きもよく読んでいなかったので、キューバの音楽グループの名前としてしか記憶していない。
 キューバの音楽ということで、思い出した。私の好んで聴いていた「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」とはいったいなんだったのだろう。ウィキペディアによると、アメリカのギタリスト、ライ・クーダーとキューバの老ミュージシャンらで結成されたバンド。「ライ・クーダーがキューバに旅行した際、それまでキューバ国外にはほとんど知られていなかった老ミュージシャンとセッションを行ったことがきっかけとなり、まず1997年にアルバムが出され、1999年にはドキュメンタリー映画が制作された」と書かれている。映画の監督はヴィム・ヴェンダース。これは観てみたいな!
 YouTubeでみつけた映画の一場面で、キューバのナット・キング・コールと紹介されて、イブライム・フェレールが歌っている。イブライムは1927年2月20日生まれ。キューバ東部のサンティアーゴ・デ・クーバで生まれる。12歳で母親が亡くなり、物売りや大工、街角で歌うなどをして暮し、その後キューバの人気歌手のグループに参加する。1962年にはフランス共産党の招きでヨーロッパ、ソビエト連邦を巡演。モスクワ・レニングラード劇場でも公演している。しかし、歌いたかった歌を歌わせてもらえず、ついに歌うのをやめてしまう。そして1996年にライ・クーダーに見出され、「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」に参加するまで、キャラメルを売ったり、靴磨きの仕事をして、そのお金で休日にラム酒を飲むのを何よりも楽しみにしていたという。
「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」は1997年にCDになり、イブライムは70歳でグラミー賞を受賞した。そんな経緯でできたCDだったとは。読む人には無知をさらしてるだけかもしれないけど、この旅は自分にとっては知らなかったことを知る旅になっているなあ。
 この動画でイブライムが歌っているのは「Silencio」というボレロ。一緒に歌っている女性はOmara Portuondo。歌っているときのOmaraの表情もすばらしい。Omaraはイブライムの妻だったこともあり、二人は昔この歌を一緒に歌ったという。