「おとたび」のたましひは、ベリーズの山間部にあるサン・イグナシオという小さな町で、ガリフナ民族の少年たちの演奏と歌を聴いています。月日はさかのぼって2012年です。サン・イグナシオはマヤ遺跡がある観光地です。
 カメの甲羅を叩いている少年は、あれ、どこかで見たことがあるな。ホプキンスの海辺のお祭りで、小屋の前で踊りながら歌っていた青年では? --やっぱりそうでした。名前はクレイトン・ウィリアムズ、「Garifuna Nuguya(我らはガリフナ)」という祝祭の歌を作った人です。2014年にPaul Naborというガリフナの偉大なミュージシャンが亡くなりましたが、その年の終りに開催されたトリビュートライブで、最も若手のガリフナ伝統音楽の担い手として、Paul Naborのカバー曲をギターで弾き語りしていました。
 カメの甲羅の楽器については、昨日紹介した富田晃さんの「ガリフナの旋律」に作り方が書いてありました。カワガメを捕まえ、それを裏返して土に生き埋めにして数ヶ月放置する。すると地中のアリたちがカメの肉を食べて、掘り出すときにはきれいに甲羅だけになっています。亀甲はブグドゥラまたはサンボナンゴとよばれるそうです。
 マラカスを振っている少年がいます。マラカスはヒッコリーの実でできていて、中に米粒ほどの草の実を入れて、木の握りがつけられているそうです。
 昨日も気になっていたのですが、太鼓の表面の皮にまっすぐの筋が入っているように見えますね。アフリカの太鼓、ジェンベにも真ん中にうっすらと縦線が入っていますが、それは山羊の背骨の部分が真ん中にくるように皮が張ってあるためです。でもガリフナの太鼓の縦線は、背骨の線じゃなくて、人工的につけたみたいに見えます。なんだろう? 
 この線についても、富田晃さんが教えてくれました。「高音ガラオンには薄いメスのシカ皮やアライグマの皮が使われ、太鼓の皮の表側には打音に金属の振動音を加えるため針金が張られる。低音ガラオンはオスのシカ皮が使われ、高音ガラオンより一回り大きく、凧糸よりさらに太い木綿の糸が皮の表面に張られる」と「ガリフナの旋律」に書いてあります。
 小さいほうの太鼓の線は針金だったんですね。よく耳をすませて聴くとたしかに針金のブンブンいう音が聴こえてきます。ガリフナの太鼓はくびれのあるアフリカの太鼓ジェンベと違ってずんどうなので、ジェンベのようなカーンという突き抜けたような響きを持たないかわりに、工夫をこらして音色に変化をつけているのでしょう。