「おとたび」のたましひは、メキシコの首都メキシコシティから隣国のベリーズへ直行便で向かおうとしている。まだ搭乗には時間の余裕があるので、アルバム『メタヴォリューション』で今年初めてグラミー賞を受賞した、ここメキシコシティ出身のギターデュオ、ロドリーゴ・イ・ガブリエーラの演奏を聴きたいと思う。
 ロドリーゴ・サンチェスとガブリエーラ・クインテーロは15歳のときにメキシコ・シティの文化センターで出会い、二人ともヘヴィ・メタル好きだったので意気投合し、ロドリーゴの兄のスラッシュメタルバンドに加わり、メタリカのカバー曲などを演奏していた。やがて二人はバンドを離れてフラメンコギター・デュオを結成、新しいスタイルの音楽を作りだそうと考えて、ヨーロッパへ旅立つ。
 英語を話せないにもかかわらず、二人はバックパッカーとして旅を続け、アイルランドの路上で演奏して投げ銭を稼ぎながら腕を磨いていく。やがてヨーロッパ中で認められ、アイルランドやイギリスの多くのフェスティバルで注目される。アルバムはアイルランドでチャート1位を記録し、2010年にはホワイトハウスに招かれてオバマ大統領のために演奏している。
 映像は2009年の「11:11」というアルバム(日本語のタイトルが「格闘弦」!)の最初に入っている曲「ハヌマン」。このオリジナル曲はカルロス・サンタナへのオマージュとされている。カルロス・サンタナもメキシコ出身だ。なぜにカルロス・サンタナ?というインタビューの質問に対し、彼はメキシコ人の偉大なミュージシャンのロールモデルとして、メキシコ人も世界を舞台に活躍できると教えてくれたので感謝している、と答えていた。
 新しいアルバムのミュージックヴィデオもあるが、この映像がやっぱり好きだ。なにもない赤土の禿山での超絶に激しい演奏は、めちゃめちゃかっこいいし美しい。スラッシュメタルとアコースティックギターという壮絶な組み合わせにふさわしい舞台だ。