地球の上層大気層「熱圏」が異常な寒冷化により、さらなる「崩壊」の傾向を見せていることをNASAが | 天賭ける! 

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地球の上層大気層「熱圏」が異常な寒冷化により、さらなる「崩壊」の傾向を見せていることをNASAが確認。過去に例のないこの大規模な異変は何を引き起こす?

投稿日:

9月28日のスペースウェザーより


The Chill of Solar Minimum



 

聞き慣れないかもしれないですが、熱圏というものがあります。

あ違った。熱圏です。

この熱圏というのは、上層の大気構造のことで、いわゆる大気圏と宇宙空間の境目に位置しています。

熱圏の位置


neomag.jp

地球の大気圏は、たとえば上の図では区切りが入っていますが、実際には(当たり前ですが)厳密に区分けがなされているわけではなく、高度が上がれば上がるほど大気は希薄になり、そして大気のない宇宙空間となっていきます。

過去記事でも「高層大気の崩壊」について、ご紹介させていただいたことがありましたが、この熱圏については、今から 8年くらい前から「熱圏の崩壊」ということで、話題になっていたことがあります。

たとえば、下は 2010年7月の GIZMODO 日本語版の記事からの抜粋です。

NASAが記録的な上層大気の崩壊を発表

GIZMODO 2010/07/21

不吉なニュース...。

NASAが上層大気の熱圏崩壊を発表しました。「少なくとも過去43年間で最大の熱圏収縮」だと、発見報告書をまとめた主筆の米海軍研究所のジョン・エマート氏は話しています。

熱圏の収縮は今に始まったことではなく、太陽の動きが活発でない時期は大気も冷え込んで縮むものなので、2008年から2009年の太陽活動極小期にこのような現象が起こっていたこと自体は驚きでもなんでもないんですが、問題はその半端ない規模。「太陽の活動が活発でない」ということで説明のつく範囲を余裕で2~3倍超えちゃってるんだそうです。

「我々に理解できない何かが起こっている」(ジョン・エマート氏)

ひとつ原因として考えられるのはCO2排出で大気圏は温まってるんだけど上層は冷却されている、ということです。でも仮にそうだとしても、「それを勘定に入れてもまだ説明が追いつかないレベルだ」と氏は話してます。なんなんでしょうね。

このように、今から 8年ほど前に、米海軍研究所の方が、「我々に理解できない何かが起こっている」と言うほどの「熱圏の縮小」が起きていたのでした。

それは、上の記事によれば、

> 過去43年間で最大の熱圏収縮

ということになっていたようなのです。

そして、それから 8年後の今、その時の記録も上回るような熱圏の収縮が発生する可能性が高まっています。これは過去最大の記録となり得るものです。

熱圏というのは、非常に気温の高い領域なのですが、現在その熱圏の「劇的な冷却化(寒冷化)」が進行しており、そして、熱圏というものは、冷却化によって「縮小していく」ものなのです。

今回は、NASA のラングレー研究所という施設の科学者が「熱圏の冷却化が過去のすべての記録を上回る(それは熱圏の記録的な崩壊を意味する)」ことについて言及したことについての記事をご紹介したいと思います。

ちなみに、このラングレー研究所というのは、Wikipedia から抜粋しますと、以下のようなもので、NASA の象徴的な施設でもあります。

ラングレー研究所 - Wikipedia

ラングレー研究所は、NASAの最古の研究施設。

同研究所は多くの航空の歴史を生み出した。そこには超音速を導く航空機研究、世界初の遷音速の風洞の開発、月の引力と月面着陸のシミュレーション、火星探索機ヴァイキングの計画などを含んでいる。

これらのいくつかは科学上、航空機史上に名を残す程度の大進歩だった。

このようなラングレー研究所の科学者たちが、NASA の地球観測衛星のデータから導いたのが、「熱圏の過去最大の冷却化」だったのでした。

まずは、その記事をご紹介します。

ここからです。


THE CHILL OF SOLAR MINIMUM
spaceweather.com 2018/09/28

太陽活動極小期の寒冷化

太陽は、宇宙時代に入って以来、最も深い太陽活動極小期に入ろうとしている。2018年はその大半が黒点のない状態であり、また、太陽からの紫外線出力は急激に低下した。

そして、最近の新しい研究は、地球の「上層大気」が太陽活動に反応していることを示している。

NASAの研究施設「ラングレー研究所」のマーティン・ミリンザック(Martin Mlynczak)氏は以下のように述べている。

「地球の高層大気に冷却化の傾向を見ることができます。 宇宙空間に近い地球の高層上空にある大気が熱エネルギーを失っているのです。現在のこの傾向が続くなら、上層大気はまもなく宇宙時代に入って以来の気温の低い状態の記録を立てるだろうと思われます」

(※ 訳者注 / 宇宙時代とは、米ソが宇宙有人飛行を開始した 1960年代くらいから現在までのおよそ 60年間くらいです)

これらの結果は、 NASAの地球観測衛星タイムド(TIMED)に搭載された観測機器サーベル(SABRE)から得られた。 サーベルは、地球の表面から 100 〜300キロメートル上空の大気のエネルギーバランスにおいて重要な役割を果たす 2つの物質である二酸化炭素(CO2)と酸化窒素(NO)からの赤外放射を監視している。

これらの分子の赤外線の状態を測定することにより、サーベルは大気最上部のガスの熱状態を測定することができる。

この高層大気層は「熱圏」と呼ばれている。

サーベル観測の調査責任者であるミリンザック氏は、「太陽活動極小期の間には、熱圏は常に冷却されます。これは、約 11年間の太陽サイクルが地球に与える影響の中で最も重要な変化のひとつなのです」と述べる。

熱圏が冷却すると、熱圏は「縮小」する。そして、文字通りその大気の半径を減少させるのだ。

この熱圏の収縮は、低地球軌道の人工衛星の空力抵抗を減少させて、その寿命を延ばすことが知られており、これは良いニュースだと言える。悪いニュースは、スペースジャンク(宇宙ゴミ)の自然崩壊を遅らせ、地球の周りにさらに混乱した環境をもたらすことだ。

熱圏で何が起こっているのかを把握するため、ミリンザック氏たちの研究グループは最近、「熱圏気候指標」(TCI)という概念を導入した。太陽活動最大期には、この熱圏気候指標は「高い」と示され、太陽活動極小期の間は、それは冷却され、指標は「低い」と示される。

「今は非常に低いです」と、ミリンザック氏は言う。

「サーベルは現在、33億ワットの赤外線を測定していますが、これは、太陽活動が活発な時より 10倍も小さなものです」

サーベルが宇宙空間の軌道から観測を続けている期間はまだ 17年間だが、ミリンザック氏たちのグループは、この「熱圏気候指標」を 1940年代まで計算した。

また、熱圏の状態が、地磁気活動や太陽の紫外線など過去何十年も観測されてきたさまざまな変数にどのくらい影響を受けているかを、サーベルは明らかにし、その過去の記録は、熱圏気候指標と太陽活動サイクルの間に強い相関関係を示していることもわかった。

2018年の終わりに向かって、熱圏の状態は「冷却」に関して、宇宙時代の記録(※ 観測が始まって以来の記録)を更新する可能性が高くなっている。

ミリンザック氏は次のように言った。

「その記録的な寒冷状態には今はまだ達していませんが、今後数カ月の間に達する可能性があります」


 

ここまでです。

つまり、8年前に話題となっていた「熱圏の崩壊」を上回る冷却化、そして、それが意味する「過去にないほどの熱圏の崩壊」が、これから起きるということになります。

記事では、それは、かつてないほど弱い太陽活動に起因しているということも書かれてあります。

 

それにしても、実際には、

「熱圏が崩壊すると何が問題なのか」

ということに関しては、具体的にはわからないのです。

いろいろな説もあり、主張もあるでしょうけれど、何か統一した「影響への見解」が存在するというわけでもないと思われます。

 

しかし、具体的な影響はともかく、今、地球の上層大気圏は、さまざまなところで「かつてない状態」が見られています。

たとえば、熱圏より低い高層大気圏である「中間層」という場所でも、これまでにないような異様な状態が起きていることを以下の記事でご紹介しました。

 

 

この記事では

・中間層は電離層と関係している

ということと、

・電離層の変化は大地震と関係している

というようなことも少し書きました。

そして、今回の「熱圏」もまた、Wikipedia には下のようにあり、電離層を持っています。

熱圏の大気の分子は太陽からの電磁波や磁気圏で加速された電子のエネルギーを吸収して一部が電離している。

この電離したイオンと電子が層になっているのが電離層である。 熱圏 - Wikipedia

 

ちなみに、オーロラが発生するのも熱圏です。

オーロラというのは、熱圏の大気の分子に衝突して作られるものであり、あの輝きを見るだけで、それが「どれだけ高いエネルギーによって作られているか」が想像できるかと思われます。この熱圏で起きているさまざまなことには、大変なエネルギーが関与しているようなのです。

下の写真は、つい最近のオーロラの光景ですが、これも熱圏で作られるのです。

9月29日 アラスカで撮影された白鳥のごときオーロラ


Marketa Murray

この2、3年、オーロラの様相がちょっとものすごくなっていまして、太陽活動の問題だけではなさそうな感じがあったのですが、激しいオーロラが増えた理由も、「熱圏の崩壊と関係があるかもしれない」と考えると、何となく納得できます。

しかし、オーロラはともかくとして、熱圏や中間層の異変や崩壊は、「空で起きることだけに影響を与えるのではない」と私は思っています。

・気象
・地震
・噴火

などを含めた地上への直接的な影響と関係があると考えてはいます。

しかし、その具体的なメカニズムは私にはわかりません。

わかりませんけれど、結局、「地球の環境がおかしくなる」ということについては、「すべての相乗作用」なのだろうとは思うのです。

気象が異常だとか、気温がおかしいとか、地震が増えたとか、いろいろと個別に考えているようなことは、すべて「何か」と関係していて、すべてがその「何か」の作用の中で、このようになっている……というように思ったりするのです。

今回の話でいえば、太陽がとても大きな役割をしていますけれど、「太陽が絶対的な存在」というようなことでもないでしょうし。

具体的なことはいろいろとわからないですけれど、地球は今、宇宙大気圏も含めて「全体として奇妙な状態に突入している」ということなのだと私は理解して生きています。