「雅紀姫。

いや、雅紀。



辛い思いをしたんだね。」



ソファに座ってぽろぽろと涙を流す雅紀の隣に座って肩を抱く、



いくら、自分と

自分の国を守るためと言え、

自分の気持ちを押し殺して、

犠牲になる人生を送ってきたのだろう。







「でも、雅紀。

それでいいの?」





「え?」



雅紀が驚いたように俺を見る。







「今のままなら、

雅紀は、

俺 怪盗SHOWに盗まれた悲劇の花嫁。



それどころか

TOBE公国の侯爵は、

怪盗から公国の宝物も

花嫁も 盗まれた悲劇の人。

花嫁を必死に守ろうとしたヒーローだ。


きっと、公爵のことだから、

マスコミや国民に

有る事無い事説明してるだろうな。



そして

俺らは そんな TOBE公国に害なす悪者と。



ま、それはそれで

面白いけどな。」




ふふふ と嬉しそうに笑いながら

説明してやれば、







「えっ。翔様。

それは 嘘です!


あなたは 確かに怪盗ではありますけど

正義を持って

私を盗み出してくれた。



悪いのは




悪いのは




あの人 公爵です!」





雅紀は、

王家のものとしての威厳をもって、

きっ と、

顔を引き締め、

こちらを見る。





「でもな。



俺らが何にも言わない限り、

証拠はない。



あいつらは、

色々なものと結託して 

自分は被害者で

こっちを悪者と決めつけることで、

自分の悪事を隠している。



あいつらの嘘を暴く証拠は何一つないんだ。」





雅紀を優しくだいて

そのさらさらのミルクティー色の髪にキスしながら、

優しく説明する。




「そんな。

あなたたちこそ、

わたしを救ってくれた正義のヒーローなのに。」



俺を心底信じてくれている甘い瞳の中に、

俺の顔が映る。



「でもな。

今のままでいいと思う?



俺ら悪党に 監禁されたままって

世間様に思われてる

可哀想な雅紀姫?




王家がいないTOBE公国も、

あの公爵の思うがまま。




あなたの国がそんなことになっていいの?


あの公爵に騙されたままの国民は

幸せだと思う?」





「いやです!


これは私が自分自身で選んだ道です!

そして

あの国は私が守ります!」



きっ。

いままで不安げに揺れていた雅紀の瞳に焔が灯る。



さすが、姫様。

いや、王子様か。


国民を守りたいという気概は

国を統べるものとしての矜持が

小さい頃から備え付けられていたのだろう。




「じゃ、

Count on me!

俺に任せて。



全てうまくいくようにしようじゃないか。」






雅紀の顎(おとがい)に指を伸ばして、

持ち上げると、

雅紀の美しい瞳がすっと閉じられる。



それを合図として、

俺は雅紀の唇にゆっくりと自分の唇を合わせた。











⭐︎つづく⭐︎







Count on me.


英語で 「私に任せて」

「私を信頼して」

という意味です。




イメージは

Aladdinの

「Do you trust me?」で。

(わかります?

ジャスミンに語りかけるセリフ

アルとアラジンが同一人物だとわかってしまうセリフですね。)







翔さんなら

こんなセリフも似合います。




コメントは非公開です。