「どうして?」



ばれたか?

俺の素性を

気づかれたのか?



内心の焦りは、隠して

笑顔は崩さない。


感情や考えていることを表情に出さない笑顔。

それが、俺の通常であり仕事でもある。


何も考えず、

何も映し出さないガラスのような瞳で

雅紀に向かい合う。



ところが、

雅紀から出てきた言葉は予想外のものだった。




「松本さんと一緒にいる翔ちゃんを見たくないの。」



?????



「え?どういうこと?」


あまりの予想外で、

表情が崩れ、ぼかんと阿呆な顔になる。



「あのね。松本さんが俺のこと好意を持ってるのはわかるけど、

俺と松本さんは、あくまでお店の人と、

お客さん。

だから

そういう関係性でお話はできるんだけど、


松本さんって本当は

翔ちゃんのことが好きだよね。」




は?


へ?


確かにあいつは、

昔っから、

俺のことが好きだとか、愛してるとかいって

ひっついてくるけど、

あれは俺のことからかってんだろ?




それよりもこの頃は、

マサキくんにお熱のはずなんだが。





「え?松本はいま、マサキに夢中だよ?

俺、ずっと会社で聞かされてるもん。


大体、あいつ。

昔っから、気が多くて、

挨拶がわりに人を口説くようなやつだし。

遊び人だしな。」




あ、そういう言い方は松本に悪いか。


しかし、

あいつが女でも男でも、

博愛主義なのは、

相葉さんには悪いが事実ではある。




「それもいやなの。」



雅紀が口を尖らせて怒り出す。



「松本さんがどういう人かどうかは

正直どうでもいいの。


翔ちゃんも松本さんが、

会社でどんな仕事してるとかも

俺はまったく興味ない。


俺が嫌なのは、

俺の目の前で翔ちゃんと松本さんが、

仲良くすることなの。


あと…」



「あと?」


言い淀んだ雅紀をうながすかのように

思わず、繰り返す。




「あとね。

俺、わがままだから。

翔ちゃん呆れるかもしれないけど。


俺、翔ちゃんしか今は見えないの。


だからさ。


翔ちゃん、

俺だけをみて?


俺の前にいるときは、

俺だけをみて 松本さんと話さないで。」





雅紀が、

俺の隣に来たかと思ったら、

俺の首に両腕を回して、

俺の唇に唇を重ねた。







⭐︎つづく⭐︎、







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