「う。あ?」

朝目覚めれば、
いつもと違う部屋。

ぐちゃぐちゃなシーツに、
ぐちゃぐちゃな俺。

裸になって眠る隣には誰もいない。



大きな喪失感と不安に苛まれながらも、
ゆっくりと目を開ける。



ああ、そうか。
ここは雅紀の部屋だ。
雅紀と一夜をともにし、
そして
永遠を誓った。


ああ、
もう
戻れない。


まちがった道へ進んでると分かってはいるが、
二律背反する感情を
どう落とし込むのか。

俺がどう落とし前をつけるのか。

それが、これからの俺への枷だ。





ごくり。

まだ、
燃え盛るからだと、
醒めて冴えざえとしていく脳。
しかし、どうしていいのかわからず
腹を決めかねて
生唾を飲むこむ。


しかしな。



隣の俺の部屋と同じ作りなのに、
どうしてこんなにシンプルで美しい部屋なのか。


落ち着かないまま、
きょろきょろと

見渡してみても、
余計な装飾品も私物もなく、
恐ろしいほど何もない。


あるのは、上の方に飾られている絵画や、
いろいろなディテールの小物が飾られてる壁へ括り付けられた戸棚ぐらいか。

それさえも、
雅紀の人柄を表すかのようにおしゃれだ。




「あ、起きた?
翔ちゃん。」


ベッドに起き上がってきょろきょろしてる俺に気がついて、
雅紀が声をかける。



「ああ。
悪い。

ずっと寝ちゃってたみたいだ。」


すまなそうに、話をすれば、
そんな俺にも、雅紀は、
愛おしそうにくすくす笑う。



「一晩中だもの。
仕方ないよね。
でも、最高だった。」


ちゅ。
俺の頬にキスを落とす仕草さえ、
甘くて可愛い。



「さぁ、シャワーを浴びてきて?

俺、ここの洗濯もしたいしね?

これ、タオルと着替え。
浴びてきたら、
美味しい朝ごはんが待ってるよ。」




雅紀の笑顔とともに、
眩しくも危うい俺たち二人の生活が始まった。






⭐︎つづく⭐︎






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