「んー。やっぱり美味しい。」


相葉さんが

ポトフをスプーンで一匙掬って

口に入れる。


そして

隣に座っている俺に向かって

にっこりと微笑む。



「うん。

美味しい。

相葉さんが 作ったものはなんでも美味しいけど。


このリゾットは本当に優しくて

めちゃくちゃ美味しい。」




「くふふ、

そんなにお褒めいただけると 

めっちゃ嬉しいです。


翔ちゃん。



でも。

俺じゃなくて

ハムの骨と 野菜と お鍋が

ことことして作ってくれただけなんだけど。」



暖かく美味しいご飯を食べていると

自然に笑顔になって心が和むのはなんだろう。



相葉さんといるからなのもあるけど、

どんどん俺がほぐれていき、

仕事や 建前など

自分の外側に纏っていた仮面が剥がれ落ちていく感じがする。






それはそうと

さっきから気になってたこと。




もうすぐご飯も食べ終わって

この優しい時間も終わってしまうし。





「あのさ。相葉さん。」


「なぁに?翔ちゃん。」


相葉さんがにっこり笑う。



それに釣られて 俺も笑顔になりながら

聞いてみる。



「なんで さっきから『翔ちゃん』って呼んでるの?」



くふふ。

甘く柔らかい笑い声。



「櫻井さんが 『翔さん』って呼ばれてるの、

今日松本さんがそう呼んでてわかったんだけど。

なんかいいなぁって。

ね?『櫻井翔』さん?」



???

何がなんだか、わからないが

どうも 松本が俺のことを「翔さん」って呼んでるのを聞いて

翔って呼びたくなったのか?



「いかにも 俺は櫻井翔だけど。

でも なんで『翔ちゃん』なの?」



「だって。

松本さんは 『翔さん』なんでしょ


だったら 俺は『翔ちゃん』かなって。

俺、松本さんには悪いけど、

松本さんに翔ちゃん取られたくないの。






『翔ちゃん。』

ね。

いいでしょ?」






ああ。



何かを勘違いしているようだが、

それはそれで もうどうでもいい。







隣に座っていた相葉さんの両腕が

また

俺の首に巻きついてくる。



ああ、

下から覗き込むとろけるような瞳に、

俺はどんどん堕ちていく。




「いいけど。条件がある。」



「翔ちゃん。何?」



雅紀の瞳の中の煌めくような光は

俺に向かってここに来い、もう戻れないぞと

俺の意思をも引き摺り込む。







「俺も 『雅紀』って呼ばせて。


あと もう一つ。」



「何?」


ああ、

目の前の雅紀の柔らかな微笑みは

俺の言わんとすることなど全てわかっているぞと見通すようだ。




「俺のものになって。雅紀。」





「はい。」



物静かだが、 

決意のこもった目で雅紀が俺に頷くと、


雅紀の唇がまた俺の唇の上に重ねられた。















⭐︎つづく⭐︎






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