熱い。


甘い。




与えられた刺激に

頭の中がバグる。




いきなり俺の唇に押しつけられた相葉さんの唇。


酔っ払って全ての制御が不能となった俺の頭が

そのまま

本能のまま

相葉さんのその華奢な背中を抱きしめる。




「ん。んん。」


ただ唇同士を押し付ける

拙くも幼稚園の園児が行うような

愛の行為の真似事なのに。



ただ

ただ


高貴に

自分の思いのみを誓うかのように

自分の唇を押しつける。



はからずしも

両腕で抱きしめた背中の

その折れてしまいそうなか細さと

そして

俺が守ってやらなくちゃという

訳のわからぬ自責の感。




唇の細胞の一つ一つから感じる甘くも心地よい感覚。



何よりも

軽くうめくように 

途切れ途切れに聞こえる

相葉さんの 微かな吐息。



視覚。

嗅覚。

味覚。

聴覚。


そして触覚。


全ての俺の五感がバグる。



何よりも

頭の奥底で 


カン カン カン と

これ以上深入りするとまずいと

高い音で警報が鳴っているというのに。



止まらない。

止めることができない。



まだ。

まだ

相葉さんとのその先を知りたくて


ただ

ただ

その柔らかい唇に

俺の唇を押し付けるままだ。





「はぁ。」



どのくらい その状態だったんだどうか。



流石にここが

俺の部屋の前のマンションの廊下だということに気がついて

慌てて

相葉さんから体を離すと。




相葉さんがまた

俺の胸に顔を寄せて

そして ポツリと呟く。




「心配だったの。

もう会えなくなっちゃうのかと思った。

嫌われてしまったのかと思ったの。


お願い。

もう離れないで。


俺、

櫻井さんと一緒にいたいの。」




ぶち。






何かが切れる。

何かがはじまる。





酔っ払っているせいにしたくても

そのせいにもできない。



悪いのは俺だ。

俺の心。

そして体。

何者かが 俺の全てを司り



頭の中の高らかになる警報をシャットダウンさせる。




そして


俺の心と体の全てが

この目の前の相葉さんを欲しいと

何もかもを放り投げて動き出す。




「相葉さん。」



俺の胸に顔を埋める相葉さんの顔を親指とそっと上に向かせて、

相葉さんの美しい顔を上から眺める。


その美しい睫毛がふるふると震え

また、

両瞼がそうっと閉じる。



そして

そのぷるぷると瑞々しい唇が

俺に捧げられようと上を向いた時。





ぐぅぅぅぅっ。




情けなくも俺の腹が 恥ずかしい音を響かせた。








⭐︎つづく⭐︎






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