「はっ。全くお前たち人間は使えない。


櫻井翔様はそんなことはないと思っていたが、

櫻井様でさえ

愛だと恋だのにうつつを抜かすとは。


そんなやつでは、

この、マエストロとしてこの世の全てを支配するのに値しない。」



銀色のロボットが、

その内部から吐き出した翔ちゃんを

金色の目で

いかにも汚いものかのように見下す。



「翔ちゃんっ。」



疲弊して、力を出し切ったかのように

その場で横たわる翔ちゃんに駆け寄ると



「翔ちゃん、大丈夫っ。」



優しく翔ちゃんを抱きしめる。





「雅紀。ごめんな。

迷惑かけた。」




ぐたぁっとしながらも俺の膝の上で横たわる翔ちゃんが

そのつぶらな瞳で俺を見つめる。



「そんな。翔ちゃん。

大丈夫?怪我はない?

しんどくない?」




「脳細胞や神経を直接繋がれて

その意思や随時反応を支配する微弱電流を流されていたからな。

身体中がうまく動かないし、

頭が重たくて自分のものじゃないみたいだけどな。



雅紀。



雅紀がいるから戻ってこられた。

ありがとうな。」



「翔ちゃん、

俺何にもしてない。


翔ちゃんに会いたくて、

ずっと叫んでいただけで。」



そんな俺を見て、

翔ちゃんは、弱々しく笑う。



「それが、功をなしたようだぞ。


マエストロのシステムは所詮機械に過ぎない。

膨大な情報を分析して

実行するための最短ルートを計算できるだけだ。



彼らが苦手なものは、

実行するためには余計なもの。

いわゆる回り道や、

直感や思いつきによる 根拠のない戦略。

そして 情緒や感性的なものや行動。



その一番最たるものは

愛 だ。


お前が、俺に愛を叫んでくれたおかげで

AIの一部がバグり、

その愛の一部である俺を排除しようと 

俺の神経への接続を解除した。


その一瞬の隙をついて

こうやってお前のところに戻ることができたんだから。」



うう。

翔ちゃんの言ってることの何分の一もわからないけど。


とにかく

翔ちゃんが

翔ちゃんの意思で俺のところに戻って来てくれた。


その事実だけが直感的に俺に伝わってくる。




「翔くん。相葉ちゃん。

そんなこと言ってる状態と違うぞ。」




大野さんの指示が、俺たちに飛ぶ。



「えっ。」





翔ちゃんを抱き抱えながら。

上を見上げれば、

ロボットが俺たちに拳を振り上げようとしている。



え、まずい、。





「くそっ。」



どんっ。


突き飛ばされた衝撃で 頭を抱えながら

見上げると、




「これで おあいこだな。

相葉ちゃん。」



俺と翔ちゃんを突き飛ばした大野さんが、

片腕でロボットの拳を受け止めていた。













⭐︎つづく⭐︎






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