「動けっ!動くんだっ!」



保志の乾いた命令が響く。



翔ちゃんも、保志も、

そして、このビル全てのコンピューターシステム、

いわば、

今の世の最高の叡智が、

目の前の この銀色のロボットに納められている。



保志がいうように、

世界の最高の指揮者、巨匠。


それは疑うべきもない。




しかし、

そのロボットが、

大野さんが投げつけた言葉によって動けないでいる。




「コトバノチカラか。


それに、

予測できない行動。


大野。

だから、お前は嫌なんだ。」



いかにも忌々しそうな保志の声。




「AIは、

インプットされたものを

瞬時に検索された過去の知識と合わせて

分析し、

次の行動を予測する。



豊富な経験と、知識の積み重ねにより

間違えない近未来の予測。

それが

AIの強みだ。」



どうした。保志。

そんなことはわかっている。


だから

俺たち人間は、歯が立たないんじゃないか。




痛みにうめく俺と、

俺を抱える大野さんを目の前にして、

そのロボットは固まったまま、

語り続ける。




「しかし、

逆に、全てをインプットしてしまうのが短所なのだ。


訳のわからないもの。

芸術。

感情。

思いつき。

言葉。



そのようなものは、

情報を取捨選択して、

インプットしなければ良いのだが、

そんな余計なものまでインプットして混乱を起こす。



大野。

私たちこの世を導く正しいものを混乱させ

余計な情報ばかりのお前さえ、

排除できれば。」




きら。



今まで光っていたロボットの赤い目が、

今度は金色に変わる。




そして、


うぃーん。うぃーん。

かしゃ。がしゃ。


ぶつ。



機械音と大きな何かをシャットアウトした音が聞こえたかと思うと、



ぐぅぃぃぃーん。



大きな音がロボットの中でぐるぐるとし始め、

そして

さっきまで動かなかったロボットが頭を持ち上げ始め、

こちらを睨みはじめる。







「大野。相葉。


忌々しいお前らを排除し、

このマエストロの情報制御を確実なものとするために、

このロボットをマエストロのシステムの自動操縦より切り離し、

私と櫻井様の意思による操縦と切り替えた。



さぁ、櫻井様。


この二人をやってしまってくださいっ!」



保志が、高らかに俺たちに向かって宣言した。







⭐︎つづく⭐︎









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