だっ。だっ。だっ。


重い足音が、

階段を駆け上ってくる。



よしっ。

階段の手すりの影に隠れていた俺が、

さっきの警備ロボットの時のように

MJの前に飛び出て

胸元を蹴りつけようとする。



「おっと。」



「ああっ。」



MJは、まるで予測していたというかのように、

俺の右足を両手でキャッチして

くるんと俺を一回転させながら 床に放り投げる。






「いってぇ。」



床に叩きつけられた俺が床からMJを見上げると、






「アイバマサキ。

こんな攻撃がわたしに通用すると思いましたか?


私はこれでも保志様より高度な人工知能を頂いています。

あなたの攻撃など想定内です。」






くそ。

見透かされてたか。


こんなにうまくいくとは思ってなかったが、

ぎりぎりとMJをしたから睨めつける(ねめつける)。







「あなたは やっぱり邪魔です。

死んでください。」





MJが、

その重い躯体で、

俺を踏みつけようとするので、

くるくると転がってそれを避けようとした瞬間。






「やめろっ。」



MJの声がする。




何かと思って上を見上げれば、




「ううっ。わん。わんわんっ。」


一斉に大野さんの手が離れたロボット犬たちがMJに襲いかかる。




「やめろ。やめなさい。

お前たちは私たちの味方のはずではないか。」




反逆した十数匹のロボット犬を

手で払い除けては 床に叩きつける MJ。


その隙に 俺は体を起こして大野さんの横まで駆けつける。






「大野さん。ありがと。」



「なんの。

あいつらが勝手に助けてくれてるはずだ。

あいつらはあいつらなりに

何が大切で、誰がいい人かがわかるんだろ。」



そう言いながら、

MJと、どうやって戦えばいいのか見つめるその目は

まるでプロの殺し屋か、忍びのよう。


まるで戦うことが芸術であるかのように、

その体の全ての感覚を研ぎ澄ましているかのようだ。






「やめろ。

マエストロ。システム、ストップ。」





ばた。ばた、ばた。



MJが叫んだ瞬間。

かわるがわるMJに飛びかかっていたロボット犬が

床に落ちて動けなくなる。



あ。

MJもマエストロのシステムにつながっているんだ。

相互補完システムの一つになっているんだな。



くそ。

なんてシステムなんだ。

機械が全く言うことを聞いてくれないし、

システムで動く機械の全てが敵なんだ。





「仕方ない。

物理的攻撃しか、お前を止める術はないんだな。」




MJを 

大野さん、松本さん、俺で取り囲み、

攻撃を仕掛けようとした時。




「ばかな人間どもが ここにいるな。

お前らが何をしようとも

このマエストロのシステムに屈服するしかないのだ。


早くこの偉大なマエストロ様にひざまづけ。」




壁から指揮棒のような細い剣がとれた保志が

階段を登ってきて、

そして 自分こそが この世界を指揮する巨匠であると誇示するかのように、

その美しい指揮棒を振り回した。







⭐︎つづく⭐︎






コメントは非公開です。