電気が使用されていないところ。


システムが蔓延っていないところはどこだ。



階段をおりながら

必死に頭を巡らせる。



8階にある劇場のすぐ下の

7階はカフェテリア。


ここは、電気が使われてるだろう。

たくさんの調理器具。照明。冷蔵庫など。


ましてや明るい開放的な空間は隠れる場所もない。



7階をスルーして 6階にいくとそこはスポーツジム。

あ、ここか。


電気はついていても、

PCに近づかなければ基本電子機器はない。


それにここには 電気を使うものが嫌うあれがある。


しかし、どう戦うべきか。




きょろきょろとあたりを見回した時だった。




どん。

どん。



どん。どん。




必死に非常階段に続くガラスドアを叩く音がする。




振り向けば



あ、大野さんっ!




ガラスのドアに近づいていくと



あ け ろ


大野さんが

大きな口の形で 俺に一生懸命指示をする。


口の形で何をしてほしいかはわかるけど。

けれどな。

電気システムはあいつらに握られてるから

開くことはできない。



どうしよう。



きょろきょろしていると、

大野さんが

必死で俺の後ろを指差す。




あ。

そうか。




俺は慌てて、ジムの中にあった

腹筋や背筋を鍛える大きなトレーニング機器を持ち上げる。



「いくぞ。」



せーの。



がっしゃーんっ!




トレーニング機器を思いっきり

ガラスドアのところに放り込めば。






ガラスが割れて




「相葉ちゃんっ。


大丈夫だったか?


それで、ニノ。

ニノはどうなった?」





大野さんが ビルの中に飛び込んで

俺の肩を押さえつけたかと思うと


思いっきり俺の肩を揺さぶった。







・・・









「やっぱりそういうことか。」



簡単な俺の説明を聞いた大野さんは、

冷静な口調で口を開く。




そう言いつつも

その顔つきは獰猛な獲物を見つけた百獣の王のように

ぎらぎらと輝き闘志を燃やしている。





「おかしいと思ったんだ。

今朝がた あいつをスマホで

屋外に呼び出そうとしたら

俺のことなぞ知らぬと言い放った。


仕事よりも何よりも

俺に狂って俺が欲しくてたまらない体に仕上げてあったはずなのに、

そんなはずはありえない。



あいつは俺のもんだ。



俺のいうことなら

なんでも聞くように躾けた俺のもんを

横取りするなんて

ふざけんじゃねぇ。」




んー。

なんか、どっか違う気もするが

目的は合ってると思う。



「とにかく、ニノを元通りにして

大野さん。


あの人がシステムの操作をしてる。

あの人さえどうにかなれば、

保志さんと MJっていうアンドロイドだけになる。


翔ちゃんも助かるんだ。」




俺が、すがるように大野さんに頼み込むと



「当たり前だろ。

俺のニノになんかあったら

許しちゃおけねぇ。


俺がけちょんけちょんにしてやる。」




大野さんが古めかしく

長袖の警備員服を腕まくりした。








⭐︎つづく⭐︎









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