「おかしい。

狂ってる…」



思わず、じりじりと後ずさる。



そんな俺に、保志はうれしそうに畳みかける。



「おかしいとは、何に対しておかしいのだ。


お前たち人間だけが正しいと思ってるから、

そう思うのじゃないのかな?」



じり。

こちらに満面の笑顔で保志が詰め寄り

嬉しそうに話し続ける。




「自然淘汰の原則って知ってるかな?

環境の変化に対して、

生存競争が起き環境に適合し適応した個体だけが生き残り、

環境に適応できない生物は死滅する。

そうやって、動物は進化していったのだよ?」





「それは動物の話だろ?

お前らAIの話じゃないっ!」



睨みつけながら言い返しても、

保志は全く怯まない。





「そうかな?

人はAIに頼りすぎ、

自分で考えることをやめている。


自信をなくし、すぐにAIに頼り、

自分の判断よりAIの判断を正解とする。


それこそ、

現在やこれからの社会に適応しないのは人間じゃないのかね?」



「ぐっ。」 



思い当たることが多すぎて、言葉に詰まる。




「それにだね。」



保志は、そんな言葉に詰まった俺に、

言い負かさんとばかりに、言葉を重ねる。





「この二宮は、俺たちにいいシステムを作り上げてくれた。

そう、相互補完システムだ。

俺たちはまるで人体や生物の免疫システムみたいに、

自分の細胞を相互に補完し、修理して正常かつ一番パフォーマンスが高く出せるようにすることができる。


そして、

この免疫システムのいいところはだね。



君や大野のような、

自分の体に害するウイルスのような個体を、

自分の体から追い出したり、 

マクロファージや、好中球などがその病原菌を喰らいつくして

自分の体の中に取り入れて栄養とするように、

異種のものを自分の中に取り入れたりすることができるんだよ。




そして、

免疫システムのおかげで

こういう異物をすぐに撃退できる抗体を獲得する。





な。


相葉くん。」




保志の両手が自分の方に伸びると、

翔ちゃんに巻きついていたロボットの銀色の触角がこちらの方にするすると伸びてくる。








「櫻井翔は、

いま薬で眠らせてある。


本物のマエストロの覚醒は、

櫻井翔が目覚めて、その神経をこのロボットの触手とコネクトさせて、

システムと、一体化させればいい。



そうしたら、

この櫻井翔という崇高な選ばれた人間が、

このビルの全てに張りめぐらされたシステムと一体化して、

全ての世を司る神が爆誕するのだ。



まずは、


相葉雅紀。


俺らのシステムの中のひとつとなって、

俺らに意識を献上しろ。


そして、 

抗体の一つとなって、

全ての攻撃をお得意の言葉で跳ね返せ。


先にお前から洗脳してやる。」







保志が一歩こちらに近づいて、

両手を俺にのばすと、


翔ちゃんに巻きついていた銀色の触手が、 

蛇が頭をもたげるように、

全部こっちに向きを変える。





その先端はまるで

細くなにもかも突き刺す注射針。

そして、

その銀色の金属は光のように

すごい勢いで俺の方に襲いかかってきた。














⭐︎つづく⭐︎








コメントは非公開です。