「櫻井さん。櫻井さん。」


部屋に戻ってしまった松本さんの言いつけ通りに
俺の膝の上に寝ている櫻井さんを
優しく揺り動かす。


「う〜ん。」

天使の寝顔が苦しそうに歪む。


あまりにもぐっすり寝ていてかわいそうだけど
でも、松本さんのいうように
このままだと風邪ひいちゃう。


お風呂は朝にして
しっかりベッドで寝た方がいい。




「櫻井さん?起きましたか。
ベッドに行きましょう。」


ゆっくりと目を開ける櫻井さんは
今度はその二重が優しく開いて
美しい八重の花が綺麗に咲いていくようだ。



「あ、ああ。
雅紀。

俺寝ちゃったんだ。

気持ちよかった・・・」

俺の膝枕で
ぼそぼそと話す櫻井さんは、まだ夢現(ゆめうつつ)。
とろけた顔で俺を見る。


うわ。可愛い。
こんな 天下の櫻井翔に、
そんな表現はおかしいけど。

それでも。
俺が守ってあげなくちゃ。
そんな気にさせる。



でも。俺とこの人は身分違い。

ちゃんと俺の仕事をしなくちゃ。


「そうですよ。櫻井さん。
いくら疲れているといっても
こんなところで寝ちゃったらダメです。
さっき。松本さんも来て心配なさってましたよ。」


「ああ。」

ぼりぼりと柔らかい髪の毛をかきながら、
櫻井さんがゆっくりと体をおこす。



「そか。
潤にまで見られちゃったか。
この頃ちゃんとするようにしてたのにな。

雅紀もごめん。
動けなかっただろ。」



「くふふ。
そんなことないです。
少しでも櫻井さんに休んでもらえたなら嬉しいです。」


にっこり笑うと、


「じゃさ。
雅紀。

迷惑かけついでに、もう一つ頼まれてほしいことがあるんだけど。」


櫻井さんが、両手を合わせて俺を拝む。


「くふふ。
なんですか?」


「ついでにさ。
俺のベッドでも一緒に寝てよ。」


「ひぇ?」


喉の奥から変な声がでた。






⭐︎つづく⭐︎







コメントは非公開です。