「はぁ。」


あまりに思いかけないことの連続に、

くらくらとめまいがしそうになりながら

家で 貯めていた息をはぁっと吐き出す。






「櫻井翔かぁ。」






思いもがけない大物との邂逅に、

まだ 胸がどきどきしている。



あの人の下で働くことになるとは。

それも、明日から住み込みでか。





帰ってきた家の前には、何個かMASTROと印刷された段ボールが積み重ねてあり、

「お入り用のものだけこちらに詰めておいてください。

あとのものは、こちらで保管させていただきます。」

と、ご丁寧にメモまで置かれており、


玄関先には、

「明日はこちらをお召しになって出社してください。」

とスーツ・靴・カバンの一式が置かれている。






「いたれり つくせり かよ。

こえぇな。」




パチン。



テレビをつければ、

櫻井翔の笑顔が画面いっぱいに映る。



「本日のゲストは自立党の櫻井翔氏です。

今後来たるであろうDX社会の展望と経済活性化についてご意見を伺います。」




「わ。まじかよ。」



テレビ画面を見つめれば、

あの時会った櫻井翔が、あの時のような嘘くさい笑顔で微笑む。



「もう寝よ寝よ。

あとは、明日だ。

どうにかなるなる。」


自分に言い聞かせるように、大きな声で独り言を言うと、

ゴロリと布団に横になった。








・・・







「おはようございます。」




しかし、

やはりおちつかないものだ。



朝、かなり早い時間に、

MASTROに出勤すると、


やはりロボット犬のお出迎え。








きょろきょろ

ここからどうしたものかと、

エントランスのところで 見渡すが、

頼みの綱の 大野さんがいない。






昨日面接に受かったとはいえ、

また

あのロボット犬に取り囲まれるのは

どうもな。




仕方ない。

大野さんか、警備の人が来てくれるまで

時間潰すか。




ぐるりと、

ビルの周りでもと思って、

ビルの裏の方に周った時だった。




「あ。ああん。

大野さん。


大野さんったら、

朝から。もうっ。」



裏口の非常階段の方から、

誰かの声がした。



















⭐︎つづく⭐︎







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