「はい。
こちらは、
櫻井さんの『大人のお子様ランチ』です。」 
 

にっこり笑って、
櫻井さんの前にワンプレートになった
オムライスの上にカツとデミグラスソースをかけたもの、ナポリタン、おまけにミニハンバーグと
付け合わせのサラダを置くと、

先にカニクリームコロッケ主体の『松本さんスペシャル』に手をつけていた松本さんが目を見張る。



「あ、ずるい。
翔さんだけ、初めてきたのにそんなの。」


じろ。

櫻井さんは、
横目で松本さんを睨み返してから、
俺の方を向いて微笑んでくれる。



「相葉さん。ありがとうございます。」


軽く俺に頭を下げた櫻井さんは、
いつもと違って、なんか仕事ができる人って感じで、
俺の知ってる人じゃないみたい。




「それにしても、すごいな。
相葉さん。

写真撮ってもいいですか?」


「くふふ。どうぞ。」


櫻井さんは、
横に置いたスマホを手に取ると、
お子様ランチを画面に納めて、
シャッターを切り始める。





かしゃ。

かしゃ。かしゃ。


二、三回しか切られていないだろうシャッターの音が、
俺の不安を煽る。



さっき、
仕掛けは切っておくっていってたから、
気が付かれるはずはないけれど。

それでも。

目の前の食べ物に対して、
見栄えだけでシャッターを切るなんて、
俺の知ってる櫻井さんらしくない。



この櫻井さんが本当の櫻井さんなのだろうか。



不安そうにスマホを構える櫻井さんを見つめていた俺に気がついたのだろう。




「あ、ごめんなさい。
せっかく作ってもらったのに、
失礼ですよね。

いただきます。」


櫻井さんが礼儀正しく手を合わせて、
目の前のお子様ランチのスプーンを嬉しそうに握った。






⭐︎つづく⭐︎







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