「翔さん。」



何気なくスマホをテーブルの上に置いた俺に、

松本が声を顰めて注意する。



「わかってるよ。

TRAPだ。」



おもいもがけず、

相葉さんが勤めていたこのカフェ。



相葉さんの様子からは、

本当にここに勤めていることは偶然であったようだし、

俺のことを知っていて、

俺に近づいたのではないことはわかる。



また

相葉さんが、ここで悪いことをしているとも全く思えない。



それでも。

このカフェが怪しいことは確かだ。



今の所は、

何もないみたいだが、

あまりにたくさんありすぎる PCや、スマホの充電用コンセント。

ビジネスマンをターゲットにしてると言ってはそれまでだが、

その割には、

充実したフードやビバレッジメニューなど、

コンテンツが盛りだくさんすぎるのだ。





「考えすぎだよ。翔さん。

あのメニューや、マサキを見てよ。

あの一生懸命な子がそんなことすると思う?」



誰も店員がいないのをいいことに、

松本はカラカラと、笑い飛ばすが、


残念ながら、

俺は、石橋を叩いて壊すタイプなのだ。


相葉さんは、何も知らないままここで働いていて、

実は何かの仕掛けが施されている店なのかもしれないじゃないか。




「松本。

お前は、相葉さんのことが、

気になってるからそんな軽く思えるんだよ。


もしかして、

胃袋とか掴まれちゃってんじゃねえの?」



牽制するつもりで軽くジャブを叩いてみたつもりだが、

逆襲に遭う。




「違うよ。

俺、マサキに本気だよ。


飯の旨さとか、そんなの関係ない。


あの子の笑顔や一生懸命さに惚れてるんだ。


翔さんこそ、

ここの飯、食って、

驚くなよ。


めっちゃ美味しいんだから。」



う。

そんなことはとうに知ってる。


胃袋はとっくに掴まれてるのは俺だ。







⭐︎つづく⭐︎








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