「お決まりになりましたか?」

 オーダーを取るためのポータブル端末を持って
櫻井さんの方を向く。

そう櫻井さんはただの同僚。
二人でご飯を毎日のように食べているなんて気がつかれないようにしなくちゃ。


ぎこちない表情は、櫻井さんも同じ。

松本さんに気取られないよう緊張しているのがわかるけど、
まるで二人が共犯者となって犯罪を犯しているような雰囲気に
心のうちは少し嬉しいのも確かだ。



「ああ、美味しそうなものがあって、
決まらないんだよ。」


くす。
心の中で微笑む。


そうだよね。櫻井さんは、
食に興味がないと言いつつも、
食の環境を整える時間と場所と技術がなかっただけで、
すごく美味しいものが好き。

俺の作ったものを美味しそうに食べてくれるもの。


「松本。お前はいいよな。
店のおすすめを食べさせてくれるんだから。」

少し膨れたように
松本さんの方を見ていうから
俺が代わりに答える。



「松本さんは常連さんですから。
こちらの食事をお気に召してくださってるので、
こちらで松本さんがお好きそうなものをお出しさせていただいています。

今日は、
この前カニクリームコロッケがお好きだと聞いたので、
今厨房で作ってますよ。」


「まじか。」


めちゃくちゃいけめてた顔が ふわぁぁと花が咲くように美しく輝く。


「いいなぁ。松本。
俺、オムライスと カツレツと ランチと ハンバーグと ナポリタンの
どれにしようか本気で悩んでるんだよ。」


いつもの櫻井さんの笑顔に、

「くふふ。」
思わず小さく声に出して笑う。






「あ。」


やばいというような櫻井さんの顔がこちらに向く。





俺も、カフェの店員の顔を作って





「それならお客様。

こちらの オムライスの上にポークカツを載せてデミグラスソースをかけた
ボルガライスや、
オムライスの上に白身のカツと タルタルソースとケチャップをかけた
ハントンライス。
ピラフとポークカツ ナポリタンを盛り合わせた
トルコライスがございます。

いかがですか。」

とご案内すると、

「まじか。」

嬉しそうに櫻井さんの顔が綻んだ。













⭐︎つづく⭐︎







ボルガライスは 福井の名物なんです。
初めてこの前食べました。
本当に、
ボルガライス 美味しかったです!
福井の皆様 ありがとうっ。

品がよくて 美味しくて最高でした。

絶対 描きたくてしっかり話に入れ込みました。


隣の金沢は ハントンライス が有名だし、
長崎の トルコライスも有名ですよね。

なんか調べたら
神戸のトルコライスは、炒飯の上にカレーと生卵をのせたものなんですね。
大阪では チキンライスの上にトンカツを
横浜では チキンライスの中にトンカツを挟んだもの。
ううん、奥深い。
私は 長崎のタイプしか知らなかった。

洋食屋さんの
大人のお子様ランチは 私の大好きなものでもあります。
これに硬めのプリンがあれば最高♡

長々、書いちゃった^_^



コメントは非公開です。