「まさかな。

ただの偶然だよな…」



松本が、モニターを見ながら、呟く。




「でも、あそこの pot って店の常連たちと同じ会社なんだろ?」




一言つぶやいたあと、

黙りこくってしまった松本の次の言葉を促すように、

聞いてやれば、

首を振りつつ否定する。




「いや

だって。


この辺の会社のやつが、あそこの店が好きで

たまるのは、 

当然だろ。



店ができたばかりとはいえ、

飯は美味いし、

珈琲も美味い。



それに、

テーブルごとに、コンセントがあって、

仕事がしやすい…。」




言いかけて、

松本がさらに黙る。




「お前な。

そこで、スマホやらPC出して仕事してたりしないだろうな。」




「何言ってんの。

翔さん。

するわけないでしょ。そんなこと。


この仕事で、喫茶店でそんなことしたら

命取りだって。」



「そうだよな。」




流石に、松本はそこまで非常識じゃないか。


しかし、

その非常識が罷り通ってるのが、

このごろのデジタル社会ってやつで。



昔っから、

ただてさえ、

会社員は、自分自身が歩く個人情報だっていうのに、

喫茶店や交通機関で、ぺちゃくちゃ、おしゃべりして

機密を漏らしまくる。



そういう仕事してるふりのやつを獲物にして、

喫茶店に張り込んでいれば、

インサイダー取引で大儲けできるってのは、

有名な話だ。




ましてや

今のデジタル社会。



かっこつけて、

喫茶店でMacBookなど開いているやつも多いが、

モニターの画面だけでなく、

モニターについた指紋。


パスコードの画像認証の時の、

指の軌跡。


画面に映った自分の顔が反射して、

こちらに見えるなど、


セキュリティなど、ないに等しい。



もっと、悪さをしたいなら、

Free Wi-Fiからの盗聴。


コンセントに、盗聴器や、

電波を仕込んで、

情報をかすめとる。



そして、忍び込んだスマホや、

PCから、

パスワードをいただいて、

会社のネットワークに忍び込む。



それを考えると、

昔よりずっとたちが悪いが、



そんなことも気づかずに、

喫茶店で、スマホやPCをいじくりまわして、

大事な機密を盗まれてるやつがいるのも事実だ。





「あの店はちがうと、思う。」



松本の、たどたどしい弁解に、

噛み付くように反論する。




「なんでだよ。」




「俺に優しいし、

まさきくんは、いい子だし、

だって、俺やこの会社には、まだ何も情報は盗まれたりとかしていない。」





「それはさ。

お前が、スマホとかの電子機器もっていってないからじゃねえの。


こんど


俺が一緒に店に行ってやる。


そこで、

電波傍受とか、妨害電波がないかとか、

機械持って、

測定してやるよ。



そしたら、一発だろ?」




松本に聞けば、

俺の顔を見てしぶしぶうなずいた。








⭐︎つづく⭐︎










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