「いらっしゃい。」

まるで、
来るのが当たり前だというかのように、
相葉さんが、
俺を自分の部屋に迎え入れる。



俺と同じ間取りであるが、
こざっぱり
いやシンプルで素敵な佇まいの相葉さんの部屋は、
まるでモデルルームがそのまま居抜きで購入されたかのようにかっこいい。

越してきたばかりなのに、
すでに本や雑誌などの紙と、
いろいろなものが乱雑に床に置かれてる俺の部屋とは大違いだ。



「おじゃまします。」


二度目とはいえ、
人の部屋。


しずしずと中に入る。



「どうぞ。
座って、座って。」


嬉しそうな相葉さんが、
リビングのテーブルを指差す。


テーブルの上には、
肉じゃが、
牡蠣の炊き込みご飯、
蛤のお吸い物、
鰤の照り焼き。


まじか、
すごいご馳走じゃないか。



「すご。
こんなご馳走。
いつ作ったの?」



相葉さんの方を向けば、
相葉さんが俺に箸を渡しながら、
にっこり微笑む。



「ごめんね。櫻井さん。
急いで作ったから、
茶色いおかずばっかりになっちゃった。

お口に合うかどうかわからないけど、
食べてもらえますか?」




こういう時、
どういえばいいんだろ。


目の前のご飯はめちゃくちゃ美味しそうで。


俺のために、
作ってもらったってことだけで、
心が跳ね上がりそうで。


でも、
相葉さんにこんなご飯を作ってもらったのは、
申し訳なくて。


俺に何もお返しできないのが、
歯痒くて仕方なくて。


感情がぐるぐる渦巻いて、
頭の中でどういうように文を組み立てようか、
俺のコンピューターが、
フリーズしたように、
円を描いて矢印がくるくる回る。


「あ、あの…」

何かを言わなくちゃと、
口を開いた時に。

ぐるるるるるるるるる



すごい音で、
お腹の虫が鳴った。









⭐︎つづく⭐︎









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