お腹いっぱいで、

もう何もお腹に入らないと思ってたのに、



相葉さんがいれてくれたミルクティーが、

魔法のように効いたのか、

俺が買ってきたフィナンシェも

めちゃくちゃ美味しく平らげた。



ネットで調べた

そこそこ有名な店だったが、

紅茶との相性は抜群で、

そんなところも、

目の前の相葉さんが魔法使いなんじゃないかと、

思ってしまう原因になってる。




なんなんだろ。

この人は。


何者なんだろう。

この人は。




自分の素性を知られたくないのだから、

他人になど深入りしてはいけない。

そう思っていても、

この人が知りたくてたまらなくなる。




「相葉さんって…」

  


「ん?」



言いかけてだまる。

かかわってはいけない。

俺はネットの中の住人で、

現実にはいないはずの人間だ。

俺の存在など残してはいけないのだ。




「なんですか?櫻井さん。」


相葉さんが、首を傾げる。




「え、えっと。不思議な人だなぁって、

思って。」




「くふふ。」


そう言いながら、相葉さんも少し視線を落とす。



「そうですよね。変ですよね。

俺もそう思います。

こんな素性も何もわからない隣の家の人が

ご飯食べにきてくださいなんて

お願いするのおかしいですよね。」




え?

あ。そんなことが言いたいんじゃなくて。


おかしいのは俺の方なのに、

それも言えない自分がもどかしい。





「いや、そうじゃなくて。 

図々しくご飯食べてるのは、

俺の方で。


逆にどうやったら、

相葉さんにお礼ができるのかなぁって。


ご飯を食べに来るのが、

お礼とか、

相葉さんは言ってくれるけど、


でも、

結局、ご飯の食材のお金とか、

ご飯を作る手間とかは、

相葉さんに迷惑になりっぱなしで



どうしたらいいものかと。」




珍しく正直な気持ちを吐露してみる。




「うーん。

俺はそこはどうでもいいんだけど


でも

確かにそれで、

櫻井さんがここに来づらくなっても

困るんだよねぇ。」



相葉さんも腕を組んで考えて、


そして、

合点があったとばかりに、

まるで落語や漫画であるかのように、

自分の手のひらを手で金槌のように打つ。




「いいこと考えたっ。


櫻井さん。

俺と連絡先交換しましょう。


そして、

二人でお財布を作って、

二人でご飯を食べるときはそのお財布から、

食材費を出しましょう!」



「ふぇ?」



相葉さんが、

自分のジーパンのポケットから、

スマホを取り出して、


自分のQRコードを取り出すと、

俺に突きつけた。










⭐︎つづく⭐︎









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