お里が知れるとか、

品が良いとか、

食べる時の所作には、

その人が生きてきた人となりが現れるものだが、


素敵な育ち方をしてきたのだろうな。


櫻井さんの食べ方をみて、

つくづくとそう思う。



「はふ。はふ。はふぅ。」



湯気を必死に避けるようにしながら、

視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚の

五感をフルに活動させて、

鍋を頬張る櫻井さん。




「うま。

ううん。美味しい。」



美味いといわず、

美味しいと言い換えるところや、


箸で摘んだ食材の一つ一つをしっかりと確認して、

目で楽しむくせに、

思いっきりたくさん口に頬張って、

リスさんのように頬を膨らませているところなんて、

可愛らしくてたまらない。




「うまいな。この野菜。

癖があるけど、

めちゃくちゃ汁にあって美味しい。


これ、芹?」



芹の根っこの部分を持ちながら、俺に聞く。



「うん。

芹って根っこ捨てちゃう人が多いんだけど、

実は根っこの部分が美味しいんだよね。


泥やゴミがつかないように、

丁寧に洗ったけど、

美味しかった?」




「うん。

芹って、緑の葉っぱのとこを

三つ葉みたいに食べるもんだと思ってたけど、

違うのな。


こんなに美味しい野菜だとは思わなかった。」



「くふふ。

そうなんだよね。


鍋にぴったりなんだよ。


それに、

確か、体を綺麗にする作用もあったはず。」



「そうか。

相葉さんがそんなに清涼で素敵なのは、

こういうものを食べてるからなんだね。」



爽やかな櫻井さんの笑顔を見て、

びくりとする。



俺の職業は、汚い。


人の稼いだお金や情報を掠め取るような仕事だ。

それが、仕事だって、

わきまえてるつもりだけど。


こんな汚い仕事についてる俺が

話す言葉じゃないな。





「そんなことないよ。」




心なしか俯いてしまった俺を、

櫻井さんはどのように思ったのだろう。




「あ、それより。

このきりたんぽも、おつゆがしみしみして、

美味しいよ。


たべて。たべて。」



気を取り直して、

櫻井さんにむかえば、

櫻井さんが湯気の向こうで、



「はい。喜んで。」



きらきらな笑顔で笑った。







⭐︎つづく⭐︎








コメントは非公開です。