「ついでだから。
全部拭いてよ。


お尻痛いんだもん。


ね?」



可愛らしく 首を傾げる雅紀。



理由にならない理由でも、
○○だからと 前につければ
お願いが通りやすくなるという心理学をどっかで聞いたけど。


これなんて
最たるものだ。


尻が痛いからって、
体の前面が拭けないってそれはないだろ。
と、
頭の奥ではわかってる。


だけど。
この雅紀の姿勢。
お願いする瞳。
甘えるような仕草。


これに逆らえるやつがいるというのか。
いや。いるはずがないだろう。

いわんや をや。
ましては それにおいてはなおさらである。
反語表現は強意の肯定。
古文で習った文法が 頭の中に蘇る。


バグる。
頭のなかがバグっているが。


このままだと
雅紀をベッドに押し倒しちまう。



「じゃ、そこ寝ろよ。」


「はーい。」


嬉しそうな雅紀が
堂々と仰向けに俺のベッドに寝転ぶ。



そう。
これは治療の一環。
雅紀の体のケアなのだ。

そう言いながらも。
俺の目が雅紀のそこにどうしても行ってしまう。


わ。
やば。

あんなに そだっちゃってる。

そりゃそうだよな。
俺が 挑発したんだもん。

あれどうにかしてあげなきゃ可哀想だよな。



「あ。」
「ひゃ。」
「はふん。」



首筋や、鎖骨。
胸元を拭いてやれば

また可愛らしく上がる雅紀の声。



「こっちもだよな。」


「ひっ。」

今度は、雅紀の足の指。
そこを丁寧に拭いてやれば。


「く。ぁあああん。」


刹那げにうめき
可愛らしい声が部屋に満ちる。



「足もちゃんと拭いてやらなきゃな。」


ウエットタオルを変えつつ。
足の指からゆっくりと
上に登れば。



拭いていないのはその部分だけとなった。






⭐︎つづく⭐︎






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