「あ?え?」


俺の家の前で 櫻井さんが紙袋を持ってあたふたしてる。


よくよく見れば
櫻井さんは、
ケーキ屋さんの紙袋を 俺の家の前のドアノブにかけようとしていたみたいだ。


俺の顔を認識した途端、
あたふたと紙袋を前にした 櫻井さんのところに
ぱたぱたと駆け寄っていく。



「櫻井さんっ。
どうしたの?」



嬉しそうに話しかければ
櫻井さんが、しどろもどろに答えてくれる。


「あ、あの。
これ。
この前のお礼。


どうしていいのか、わからなかったからさ。

お口に合うかわからないけど、
焼き菓子。フィナンシェ。


いつ会えるかどうかわからなかったから
こんなものしか なんだけど。


もしよかったら受け取ってください。」




「えっ。
フィナンシェ。

俺大好物なんだけど。


まじ。
うれしいっ。


もらっちゃうよ。
いいのっ。」



フィナンシェに大興奮した俺の顔をみて
櫻井さんは にこりと微笑むと



「じゃ。」


手を上に上げて去っていこうとする。




「は?
櫻井さん何言ってんの?

俺へのお礼は一緒にご飯食べてくれることだって言ったでしょ?


今日、
ちょうど鍋なの。


デザートにフィナンシェもあるし
一緒に食べよ。」



櫻井さんの手首を握りしめると
ぐいぐいと俺の部屋の中に連れ込んだ。







⭐︎つづく⭐︎






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