どうすればいいんだろ。


松本さん。



あの人が曲者なのか。

それとも あの人が勤めている五葉不動産に手練のSEがいるだけなのか。


僕や うちの店 potに

どういうつもりで近づいてきてるのかわかんない。




やっぱり

ニノが言うように

慎重に様子見しかないのかな。






頭のなかで 考えが堂々巡りしながら、

スーパーのレジ袋を手に

ぽつぽつと家路を歩く。





でも

いいことも 一つ。


今日はスーパーの食料品売り場にお買い得食材ゲット。


セリと鴨肉。

そしてきりたんぽ。



美味しい 鍋が待っている。


くふふ。






うちの店は、

オフィス街の喫茶店だから

朝は少し早いけど、

オフィス人口に合わせて 17時閉店なのはすごく助かる。




ディナーには力を入れることができないという

オーナー および マネージャー の大野さんとニノの経営判断にもよるけど

どちらかというと

あの二人が、ゆっくりいちゃいちゃしたいんだと 思っている。


二人は、

あの店の上で暮らしているから

いわゆる職住近接だけど。


流石に俺は、そういう訳にはいかないから

近くのマンションを借りての一人暮らしになるわけで。



ああ、

こんなにいい食材があるのに

一人で料理して 

一人で食べるのは つまんないなぁ。




一緒に買ってきた 日本酒も

チラリとみながら

思いをはせる。





そういえば、この前

隣の櫻井さん可愛かったな。



たまたまとは、言え

一緒にご飯を食べてくれた隣人のことを思い出す。



すっごく大きなお口で

ご飯を詰め込んで、

そして すごく美味しそうに食べてくれた。



ただの煮物なのに

美味しいなんて すごく言ってくれて。


本当、

あんなご飯で申し訳ないことしちゃった。



また

一緒にご飯食べてくれないかなぁ。




さっきまで

鬱々と考えていた松本さんのことなど忘れて、

頭のなかは

櫻井さんと 美味しい食べ物でいっぱいになる。



ずっと 冷たく真っ黒だった頭のなかも

いつの間にか ほわほわと真っ白の湯気のようにあったかくて

幸せな気分に包まれる。



うん。


考えても仕方ない。


ないものをねだっても仕方ないし。



今日の鍋、ゆっくり楽しもうか。




エレベーターに乗って 

5階に踏み出した時だった。




「あ。」



自分の部屋の目の前に櫻井さんがいた。









⭐︎つづく⭐︎





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