🎵かちゃ。かちゃかちゃ。🎵



コンピュータのキーボードを

叩く音も

音楽に聞こえる。




口には出さないけれど、

頭の中にはまるで歌が流れているようで、

リズムに乗って、

コマンドを打てば

仕事も捗る。





「どしたの?翔さん。

なんか、いい事あった?」





一人で仕事をしていたはずなのに、

気がつくと、

後ろに松本がキーボードを覗き込むように、

張りついていた。







「帰ってきたのかよ。」






邪険にしたつもりだが、

こいつにはそんなことは伝わらない。



ぺたぁと、

背中に張りついて、

首に手を回されて胸を押しつけられる。




「えー。相変わらずだなぁ。

なんか、うきうき仕事してたからさ。


なんか、

見つかったのかなぁって、

思ってたのに。


なんか、プログラムとか打ってんの。

つまんないの。」







仕方ないだろ。

お前が、ちゃんとモニターチェックしないからだ。



まぁ、こいつを遊軍のように、

自由にさせておいた方が、

敵さんは尻尾を出しやすいのもあるし、


俺はこうやって、

コンピュータ相手に、仕事をしている方が楽なのもあるがな。




「そういうお前は、何がわかったのか?

松本。」    





視線などこいつに合わす必要にない。

モニターに向き合い、

キーボードを叩きながら聞いてやると、





「何もない〜。」



へらへらと話し出す。




「何もないけどさ。翔さん。


ここのオフィス街の会社員さんたち、

意識ゆるゆるだわー。

かっこつけて、

自前のMacBook開いて 

カフェで 仕事してるふりしてんのー。


そういう自分がかっこいいって

思ってんのかねー。」




ん?



「また、カフェに行ってたのか?」



「うん。

この前も行ったpot。

まさきくんに、会いに行ってきたぁ。」



はぁ。

まったく、こいつは。


狙った獲物は逃さないと豪語するが、

今度は、

カフェの店員かよ。



「男だろ?

店員さん。」


 

冷たく言い放ってやるが、



「男でも、女でも、

いいものはいいんだよ。


美しいものは愛でるためにあるんだよ。


俺が愛してあげないとー。」




はぁ。

こいつはまったく。


この博愛主義にも参ったものだ。




「そのまさきくんとやらは、

どういう子なの。」




「とーっても可愛い子。

素直で真面目そうだから、

どうしようかなぁって思って。」




「そんな子なら、

お前の毒牙にかけるのは、

よくないんじゃないか?


ここにも長居しないつもりだぞ。

さっさと片付けて、

ずらかろうぜ。」



淡々と冷たく言い放ってやったのに、

こいつは、全く懲りてない。





「そういう子だからさ。

俺の愛で、

花開かせてやるのも、

喜びの一つかなぁって。」





「はぁ。勝手にしろ。」




そんなことを言いつつ、


モニターを見ていたら、

怪しい信号。





「おい。

これ見てみろ。」



モニターを指差せば、

この社内の人間ではない誰かが、

システムにログインしようとしている気配があった。












⭐︎つづく⭐︎











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