「ふざけんなぁぁぁ。
雅紀に何かしたら容赦しねぇっ。」



俺が、大声で叫ぶが、
何せ 何の考えもなく飛び込んだから丸腰。

格好つかないことこの上ない。


雅紀の筋ばった腕は縛り付けられていて、
動かすことができそうもない。

それをいいことに
そいつが持った注射器の針は 雅紀の腕の方に向かっている。


雅紀は椅子に縛り付けらた体で
椅子ごと必死に体を振り回して
どうにか そいつからの攻撃をかわしている状態だ。





「そんなことは言っていいのかな。」


そいつはにやにや笑いながら、
周りをきょろきょろと伺うと、


「うっ。」


いつの間にか、
銃口が俺たちを取り囲んでいる。



「お前が相葉を助けるために何かしたら、

その銃口が火を吹くぞ。

お前、颱風高校の先公だろ?
なんで 銃を持ってるのかわからねぇが、
お前の可愛い生徒をみすみす見殺しにするわけにはいかねぇだろうが。」


「くそっ。
クズめ。」



そいつを睨みつけると
そいつは 楽しそうに笑う。


「クズで結構。
颱風高校の相葉雅紀を しゃぶ漬けにすれば、
薬欲しさにこいつは俺らの言いなりのまま。

こいつを薬漬けにするだけで、
この県のすべての高校に薬は出回り、
高校だけじゃねぇ。
中坊や小学生、
そしてその親にまで薬は蔓延ってくわけだ。


本当。最高だなぁ。

全然労せずして俺らの販売経路は拡大し、
需要も増え、
この県全部が俺らの組織のものになる。

さ。
お前らも命が欲しいだろ?

相葉の次には、お前らもこの注射打ってやるからよお。

大人しく、
相葉が気持ち良くなるのを見てるんだな。


さ、相葉くん。
この先公やお友達が蜂の巣になるのを見たくなかったら、
大人しく
この お注射を味わってね。」


がた。

動けなくなった雅紀の腕を
そいつが押さえつけ注射針を雅紀の腕の方に向ける。





かぁぁぁぁぁぁぁぁっ。


久々、頭に血が昇る。
こんな外道どもに俺の雅紀の体に
手を触れさせてたまるか。



くるり。
松本、横山、村上の方を向いて
周りに聞こえないように静かに囁く。




「悪い。お前たち。
俺、先生だけどさ。
何よりも 俺の命よりもお前らの命よりも
雅紀が大事なんだわ。

俺が、こいつらの注意惹きつけるから、
お前らはお前らで勝手に逃げてくれ。

あとはよろしくな。」




「「「はぁ?」」」


俺の勝手な言い草に、
銃口に取り囲まれて背中合わせになっていた松本・横山・村上が、
呆れた顔をする。



その瞬間、


「うぉぉぉぉぉぉぉっ。
雅紀に手を出すなぁぁぁぁ。」



周りの松本や横山、村上を銃に当たらぬよう
銃口を突きつけていたやつの足元につき転ばして


いきなりダッシュすれば、




「おおっ、なんだ?」


驚いて一瞬バランスを崩す 雅紀の横の下衆。

やっぱり見事な ど素人、
想定外の物事への対処が弱い。





バシュっ。

そいつの方に向かってチョークケースを投げ飛ばせば、



ぱりんっ。

派手な音を立てて注射器が割れる。




「雅紀っ。」
「翔ちゃんっ。」



椅子に縛りつけたままの雅紀を抱きしめれば、
すべての銃口は俺に向かっている。




「お前ふざけんな。
そんなに死にたいなら、
お望み通り お前から殺してやるよ。」




かちり。


すべての銃口が俺を向き
誰も動けないまま。



雅紀の横にいた下衆が、
胸のポケットから銃を取り出し、
俺のこめかみに銃口を当てると引鉄に手をかけた。









⭐︎つづく⭐︎






コメントは非公開です。