​外野の言葉はシカトする の 巻




「テ・アゲロ」


銃を当たり前のようにこちらに向けた相葉くんの言葉が、

美しい唇から紡がれる

まるで 異国の言葉のようで


「手 上げろ」という日本語であることに

しばし頭が追いつかず、

変換に戸惑う頭。





でも、

すぐにこの状況を把握する。



相葉くんが、

首を絞めているのは、

多分 相葉くんをここに拉致した事務所の社長。








俺の推理だと、

相葉くんは、番組の放送中に、

何かが起きて、

事務所に拉致されたはず。




そうじゃないと、

あのテレビ局とこの事務所の間で行方不明になることなんてない。



普通だったら体調不良で済むことも、

相葉くんの家族や友人が、

彼と連絡が取れず、

事務所に詰め寄ったか、警察に通報しようとしたため

事務所としては、

仕方なく誘拐、行方不明として、

事件化したのだろうが、


実際は自分の手の元にいた。



灯台下暗しってやつだな。



としたら、

相葉くんは、

自分を拉致した社長から、

やっと、今解放されたはずなんだ。



それなら、

逃げ出さなくてはいけないのに、



なぜ。

なぜだ。



銃をこちらに向け、

社長を盾にとってるのか?





「相葉くん。

助けに来た。


ここから逃げよう。


警察も探してる。」




ひとまず、

伝えなくてはいけない事実だけを

口早で伝えると、





相葉くんの顔が歪む。





「相葉?

それ、誰のことだ?



俺は、

『二丁』 殺し屋だ。


こっちに来たら、

まず こいつを殺す。



それでもいいのか?」





相葉くんの銃は、

今度は、事務所の社長のこめかみに突きつけられる。







???


へ?


なんのこと?




またもや 俺が、

はてなマークに包まれるが、


俺の疑問に答えるように

今度は社長の悲鳴が響き渡る。






「この子は、

かわいそうに

知ってはいけない事実を知ってしまったから、


催眠術で、

その記憶を消そうとしたのに、


なぜかわからないけど、

この前演じたヒットマン役の『二丁』になりきってしまってるんだ。



誰かわからないけど

お、お願いだから、

助けてくれー。」




確かに。

あれ、トイガン(モデルガン)だけど、

こめかみに当たってるからなぁ。


普通のトイガンなら、

アルミ缶ぶち抜く程度だろうけど、

それが、至近距離で、

多分あれ演技用に火薬破裂するようにできてるわ。



こめかみに撃たれたら、

まず



死ぬな。




うーん。どうしようかなぁ。



きっと、

榎本が、セキュリティシステム全解除したときに、

相葉くんを繋いでた金属錠も、

解除されて、

こんなことになってんだろうけど、


これ以上、

長引かせるのも、

榎本に迷惑かけるしな。




仕方ねぇ。



「な、助けてくれ。

あんた、探偵だろ?


相葉が見つかったんだからいいだろ?


まず、こいつをまた錠に繋いでくれ。」


社長が必死で、

相葉くんが、繋がれていたであろう壁に繋がれた金属錠を目で合図する。





ああもうっ。




「ああ、めんどくさ。


外野の言葉はシカトするってか?」



銃を社長に突きつけながら、

こっちをずっと見る相葉くんのほうをチラリとみると、


ずきゅん。


俺の銃で、

相葉くんの持ってるトイガンを弾き飛ばす。



一瞬、嬉しそうな顔をした社長を



ずんっ。



今度は、

一蹴りで蹴り飛ばし、

気絶させると、



「悪いけど、行くぞ。」



ずんっ。


相葉くんの鳩尾に、

一突きかまして、

気絶させる。



「おっと。」

倒れ込む相葉くんを両手でキャッチして

そうっと、床に寝かせると、



今度は


「ぽちっとな。」


事務所の社長を 先ほど相葉くんが繋がれていたであろう

壁に張り付いている金属錠に繋ぎ止める。




そして。




「この世に悪は栄えない。

天に代わって成敗するぞ ってな。

いや、本当だったら 『火星に代わって折檻』してもいいぐらいだわ。」


気絶したままの社長に 吐き捨てるように言うと、




相葉くんの体を肩に担いで、

事務所の地下を退散した。










⭐︎つづく⭐︎








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