満タンcarなんだ の巻



「起きて。

太陽先生 起きて〜。」



ん。なんだ、なんだ?


よくわからない状況に、

ふと目を覚ませば、

俺は ガリバー旅行記の主人公のように

教室で大の字になって寝ていて、

保育園の ガキたちが、

俺の顔を覗き込む。


腹の上乗ってるやつや、

手や肩を必死に揺さぶってるやつ。



「王子様はね。

こうやってキスすれば目覚めるのよ。」


おっと、

おませさんがキスしてこようとするじゃねぇか。



「ちょ。

まだ、10年早い。


10年経ったら濃厚なのぶちかましてやるな。」


おませなガキの目をみて

ばちんとウインクしてやって、


そして



ひょい。


腹筋だけで飛び起きる。




その後は

おかえりのお支度とやらで

俺の 業務もおしまい。





 「じゃあな。」


ひまわり保育園のガキどもに手を振れば、



「またねー。」

「太陽せんせー。ありがとー。」

「またきてねー。」



ガキどもが一生懸命手を振り返す。



「また来なくていいわよ。」

「最後、あんた寝てばっかじゃないの。」

「ほんと、サイテー。」


保育士のおねぇちゃんやら、無理目のお姉様がたがブツブツいうけど知らんぷり。

俺が、

誘いの言葉の一つでもかけてやらなかったから

むくれてんだろう。


今度、街であって可愛らしい格好でもしてたら

尻ぐらいは撫でてやってもいいけどな。




「あ〜あ。なんか一日疲れたなぁ。

スーパー寄って家でも帰るか。」



頭の上で腕を組んで、

街をふらふらすれば、

真白な学生服の下校姿。



「おお。おお。

真っ白な制服。

あれ、あのおぼっちゃま学校の 一ノ宮高校じゃん。」



一ノ宮高校は、

この辺で一番エリートの名門。

おぼっちゃまとお嬢様が通う高校として超有名。




「ま。俺には関係ないけどな。」



ふらりとスーパーに寄れば、


「え。あれ?」


真っ白なさっきの高校の制服の生徒が、

コロッケ買おうとしてるー。


おお。横綱コロッケっていうのか。

美味しそうだな。



しかし。

珍しい。



あのスーパーエリートの一ノ宮高校の生徒が

こんなスーパーにくるなんて。

そんなやつもいるんだな。







ま。俺には関係ねぇか。



と、

惣菜を買おうとしたら、



うおおおおおおお。

すごいおばさまがたの怒涛の攻勢。



コロッケやら惣菜やらが全て売り切れた。




まじか。


ふらりとスーパーの他のところを巡ってみても、

すぐに食べられそうなものはない。



かといって、

スーパーの食材で、

食事を作るとかいう腕は俺には ない。




「仕方ない。」



俺はふらふらと 食事を取るために

カフェに向かった。









・・・







「いらっしゃいませぇ。」



カフェといっても

普通のカフェじゃない。


メイドカフェじゃないけど

食事も 珈琲も美味しいのに。

いわゆるメイドさん姿の

可愛いエプロンをした女の子が接客をしてくれる・


メイドカフェってさ。

あれって作られた 偶像のメイドじゃん。


ここのは違うんだよ。

ちゃんとメイド姿だけで接客も渋いし、

大人の魅力ってやつね。



「お冷をお持ちしました。」


俺んとこ来たのは、

おとなしそうな可愛いツインテールのメイドさん。


んん?

なんかどっかで、見たことある気もする。


でも。


そのもちもちしたお餅のような肌とか。

清楚なくせに

やらしく上がる口元ととか

唇の下のほくろとか。

まじで俺好みだから、

どっかで 会ったら即口説いてるはずだよな。




「ねぇ。名前なんての?」


「民子です。」



「可愛い名前だねぇ。」


「ありがとうございます。」


腰を折って

慎ましくお辞儀するとこもいい。


ちょっと

俺、いろんなとこが 満タンよ。

ちゃんと昼寝もしたし、

心も あそこも しっかり

満タンcarってやつで どこでも暴走しちゃえるよん。


正直 今日のおやつの モー子より

ずっと好みなんですけど。



「ねぇ。お兄さんと今日遊ばない?」



しっかりと

可愛いクリームパンみたいな手を握りしめて

口説いてみたら。



「そんな。

無理です。

やっぱり、僕こんなお店無理。



御村くんとこの家政婦さんにするっ。


失礼しますっ。」



ばたばたと。その可愛い子が駆け去っていった。







⭐︎つづく⭐︎







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