「雅紀。雅紀。雅紀っ。

どうしたんだ。


誰にやられたあっ。


俺の雅紀に手を出すなんてっ。

ちょっと 

痛い目に合わせたやらなくちゃ・・・」




思わず内ポケット内のチャカに手を伸ばし

外へ向かおうとした俺を


雅紀が血だらけの顔

血だらけの服で必死で止める。




「翔ちゃん。

違う。違うって。


これ、俺の血じゃない。

返り血、俺は全然平気だって。


もし

怪我でもしてたら、

いつものもぐりの医者んとこ行ってるよ。


ここに帰ってるってことは全然平気だってば。」




ん。そうか。

確かに。




俺ら闇の稼業のものには

真っ当な医者のとこなんていけないから

こういう事情も警察に通報しないで黙っててくれるやばい医者ってやつがいる。

大体無免許だったり

脛に傷持ってたり

いろんな事情がある奴らなんだが、

こいつだって一端の不良。

そういう医者との付き合いがあってあたり前だ。



雅紀がそこに行かないで、

ここにいるってことは雅紀は無傷なんだ。




「雅紀。そうか。

お前が手を下したんか?」




「ううん。」

雅紀が首を振る。




「俺んとこの若い子とかが、

のしてくれてる。


最後は金髪の狂犬 ヨコがさ。

両手をポケットに突っ込んだまま、

ひと蹴りでぶっ飛ばしてくれたんだけど。


おかしいんだよ。」



雅紀が血だらけの顔を

あっためたタオルで拭きながら、

首を傾げる。


血が固まってこびりついた肌は

なかなか血を拭き取ることもできない。

ましてや他人の血。

気持ち悪いことこの上ないだろう。



「どうした?」


ひっきりなしに首を傾げる雅紀に聞いてやる。




「翔ちゃんも、

経験いっぱいしてるからさ。

わかるだろうけど。


普通、

人って こいつには刃向かえない。無理だ。って

思った瞬間。

完全に 服従するんだよね。


人も動物だからさ。

本能なんだろうね。

上下関係で噛みついちゃいけない、たてついちゃいけない。って思うもんだよ。


だからさ。

一度服従させたはずの高校が

調子乗って、

俺ら潰しにくることが間違ってるし、


ましてや、

そいつらの高校だって他の学校と繋がって連盟組んでるから

俺らのみならず

そいつらからも孤立して潰されることがわかってる。


数の論理じゃ勝てないってわかってるのに、

それなのに、

やられてもやられても

痛みを感じないみたいに

俺らに飛びかかってくる。


気を失うまで、ぼこぼこにしてやらないと

おわんなかったんだよ。


そう。


まるでゾンビみたいだった。」




もしかして。



「なぁ。雅紀。


そいつら、なんかに操られているようだったか?」



「あ、そう。

そんな感じ。


なんかさ。

俺らを潰すことのできる実力も腕っぷしもないのに、

ただただこっちにやってくんの。


血だらだら流して、ぼろぼろになりながら。


まじ、きもいんだけど、

なんなの、あれ?」



雅紀が、まだ血がこびりついた頬でこちらを向く。



なるほど。

雅紀の顔や頭には傷がないようだ。


でもちゃんと身体中調べなくちゃな。



そして、

雅紀に俺の中で出た答えを示してやる。





「ヤクだ。雅紀。

そいつら

誰かにヤクもらって、

お前ら潰せって命令されてんだよ。


薬漬けになっちまえば、

痛みも感じねぇし


逆に、

お前ら潰さないと

薬がもらえないとなれば

中毒症状に苦しむことになるからな。」



「まじか。」



雅紀が天を仰いだ。






⭐︎つづく⭐︎







コメントは非公開です。