雅の声に、
思わず目を開ける。
「えっ。」
目の前には
人の姿となった雅。
しかし、肩から下は石化しており。
その石の背中に 毘沙門天の宝棒が突き刺さっている。
「くふふ。
潤様。
これなら、もう
櫻井様をいじめられないね。」
にこりと俺の方を見ていた雅が
毘沙門天の方を振りかえって笑う。
「本当にな。
雅、お前。
しかし
自分の身を犠牲にしてるな。
わざと
自分の身に宝棒を突き刺してから
石化したろう。
俺の宝棒がお前の体に突き刺さって抜けやしないわ。」
俺を守るように抱きしめている雅。
息絶え絶えに
俺に向かって微笑みかけてくる。
「よかった。
櫻井様が無事ならそれでいい。」
「雅。雅・・・
お前、俺のことを守って・・・」
「翔様。
俺、たった2日だけだけど。
あなたといられてよかった・・・
あなたといることだけが
俺の望みだったの・・・
本当に
本当によかった・・・」
ばたり。
俺を抱きしめていた雅の腕から力が抜け
だらりと垂れる。
「雅ぁっ。」
俺の声が咆哮のように神社に響く。
「雅。雅。
起きろ。起きろ。雅ぁぁぁぁ。」
俺が、必死に背中に宝棒が突き刺さったままの
雅を抱きしめながら、
叫び続けると
ぱん。
ぱん。
ぱん。
「はい。そこまで。」
さっきまで石の狛犬の像であったはずの和が、
いつの間にか可愛い男児の姿に戻って
雅を抱きしめる俺の前に立って
柏手のように手を叩く。
「もう雅もそのへんでいいでしょ。
潤様も気がすんだみたいだし。」
潤と呼ばれた毘沙門天様は
「まぁな。」
それでも気が済まないという感じで、
ふんと、顎をあげ、
つんとした顔で俺を見下す。
「ほら、
雅。
私の宝棒を返せ。」
潤様が、
宝棒をなくし、何も持っていない右手を
雅の方に軽くかざすと、
石化されていた雅の体が
柔らかい人の姿に戻り、
そのまま 宝棒が潤様の手元に戻っていく。
さっき突き刺さっていたはずの雅の背中には
着物がやぶれ
血がどろどろと吹き出していたが、
「俺は、
疫病を祓う無病息災の神でもあるからな。」
潤様は口角を上げてにやりと笑い宝棒を軽く上にかざすと
雅の体も着物も
みるみるうちに普通に戻っていった。
⭐︎つづく⭐︎
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