今日は Christmas Eve。

 こんな都会でも
赤と緑にドレスアップ。

 土曜日ということもあって、
街も、人も浮かれてる。



 僕も、
楽しいクリスマスを。


と、言いたいとこだけど、
僕は残念ながら、
街中で、そのクリスマスの装飾の一部。

「どうぞ。」
「よろしくお願いしまーす。」
赤と白のサンタさんの帽子と、サンタさんの服で、
ひたすら、にっこりとポケットティッシュを差し出している。


 ティッシュを配りながらも、
必死で、目は泳いでる。


 あの人。
 僕の憧れの
 あの人に会えないかなぁ。
なんて。

 
 あの人は、
この前、僕が傘がなくて、
本屋で雨宿りしてた時。

僕の後ろの本屋の中からふっと現れて、
「これ。」
僕ににっこりと笑って傘だけ渡して
街中に駆けて行った人。



僕は、
いきなりだったのと、
その人の笑顔に撃ち抜かれて、
固まってしまい、

何にも言えずに、
その人の背中が土砂降りの雨の中に
消えていくのを
ただ見てた。



無造作に押しつけられた傘は、
僕の宝物として、
僕の部屋に置いてあって。


僕はただ、ただ。
あの人に会って
お礼が言いたいのもあって、
今日のバイトを選んだんだ。




「はい、どうぞ。」
「ありがとうございます。」


ひたすら、
ティッシュ配りの時間はすぎる。



周りを、
見渡しても、
腕を絡めて歩く嬉しそうなカップルや、
手を繋いで楽しそうに歩く親子たち。

みんな、
自分と相手を
お互い大事に思っている幸せな空間の中に
いるようで。


ぽつんとひとりで、
ティッシュを配っている僕とは異空間。
やっぱり、
僕はただの街角の一風景に過ぎないんだと、
その笑顔に思い知らされる。



「ありがとうございましたっ!」


とうとう、
最後の一個も配り終えちゃった。



ノルマが終わって嬉しいはずなのに、
あなたに会えなかったという虚しさだけ残る。

もし、
あなたが恋人や家族と共に、
嬉しそうに歩いていたとしても。

あなたを見ることができた。
それだけで、
僕には最高のクリスマスだったのに。



仕方ないな。

よっこらしょ。
さっきまでティッシュを入れていた
今は空になった白い袋を
背中に背負って、
目の前の横断歩道を駅に向かって歩き出そうとすると、





「ね。
サンタさん。
プレゼントちょうだい。」


ぽん。

背後から、肩を叩かれる。



「もう、ティッシュ終わっちゃったんです。」

そう言いながら、
後ろを振り向くと、




「え?ふぇ?」



あ、あの人の笑顔。




あの人が、
優しい瞳の目尻を下げて、
僕ににっこりと笑いかける。



「プレゼントがないなら、
プレゼント代わりに、
名前教えてよ。」



「あ、あぃ…
相葉雅紀と言います。」


あまりのことで、
心が追いつかないまま答えると、


「雅紀か。
いい名前だね。

俺は、櫻井翔。

ね。
せっかくだからさ。
サンタさん。

一緒にデートしよ。」



櫻井さんが、
白い袋を握ったまま
呆然とする僕の手を、
そっと上から握りしめる。



「えっ。えーっ。」






 口を開けて立ち尽くす僕の前に、
いきなり大きなクリスマスプレゼントが、
落ちてきた。






⭐︎おしまい⭐︎






おはようございます。
相葉さんの御生誕記念奉納話。



先にご案内した通り
今年は、
一話完結のお話を三編、
お送りいたします。



朝は、
嵐さんの
Winter Days
で爽やかな話を。



また、11時、
17時に
お会いしましょう。