「!
相葉?」
不思議そうな俺など構いもせず、
相葉がピアノのところまで駆け寄ってくる。
「すごい。
櫻井先輩っ。
すごいです。」
鍵盤の上に置いていた
俺の手をいきなり拾い上げるように
その大きな掌で握りしめて、
俺の指をしみじみと見る。
「櫻井先輩は、表現者なんですねっ!」
俺の手を握りしめながら、
興奮した様子で話す相葉。
「は?
へ?
なんだよ?
その表現者って。」
黒目がちのつぶらな目が、
俺を見つめてきょとんとする。
「え?
あ、あの?
自分の気持ちや、感情が、
ピアノや歌で表現できてすごいなって。
それに、あの。
その金髪やピアスや、
赤いシャツも、
先輩なりの表現なんでしょ?
違うんですか?」
今日初めて会っただけなのに。
いきなりの言葉が、俺の心を刺す。
「はっははははっ。
そっかぁ。
表現者かぁ。」
いきなり笑い出した俺に、
今度は相葉がびっくりする。
「ふぇ?
俺、なんか変なこと言いました?
す、すみません。
俺、ほぼ初対面の先輩に
こんなこと言って。
でも、感動したんです。
先輩はきちんと自分を表現したいっていう
自分を持ってる人なんだなって。」
「そう見えるのか?」
不安な心を隠して、
相葉に聞けば、
「そう見えるんじゃなくて、
そう感じます。
先輩のことをみんな不良とか言うけど、
俺にはどうもそうは感じられなくて。
うちの親父が言うんすよ。
『人は外見じゃない。心だ。
それがわかる人間になれ。』って。
なんか、
先輩見てると、そーいう感じがします。」
「そっか。」
相葉の言葉に、
目を伏せる。
俺の手は、
まだ相葉の大きな掌に包まれたままだ。
「っていうことで、
櫻井先輩っ。」
「はい?」
相葉が俺の手を自分の目線まで上げる。
「僕。
先輩ともっと仲良くなりたいです。
僕からお願いします。
僕に先輩のことを教えてくださいっ。」
相葉が俺の掌をおしいだくようにして、
頭を下げる。
その可愛らしい懇願に、
俺は自分の心を隠して、
「おう。
いいぞ。
まずは、連絡先でも交換するか?」
先輩の顔をして答えたのが、
俺と雅紀との始まりだ。
⭐︎つづく⭐︎