一年生の仮入部は、
一時間だけ。
7時まで部活をするって言ってたタッキーたちに、
「ありがとうございましたっ!」
ってちゃんと挨拶して、
体育館から、仲間たちと校門へ行く。
「明日の宿題。
多いよなぁ。」
「小学校の頃とは大違いだよな。」
「特に、英語の量。半端なくない?
教科書の英文。全部写してこいだって。」
みんなとの会話で、
あっと気がつく。
「あ、俺、
英語の教科書。
教室に忘れてきたっ。
取りに帰るから、先帰ってて?」
「「「わかったあ。
じゃあな。相葉。」」」
「ばいばーい。」
みんなに手を振って、
校舎へとんぼ返り。
俺、小学校時代、
全部置き勉だったからな。
教科書を持って帰らなくちゃいけないなんて、
考えつかなかったよ。
靴を脱ぎ捨てて、
上履きを突っかけると、
一段飛ばしで四階まで階段を上がる。
「あ。教科書。あったあった。」
バスケの道具しか入ってないリュックに、
教科書を詰めて、
廊下に出ると、
遠くからピアノの音が聞こえる。
さっきまでは俺のバタバタした足音にかき消されてたとても綺麗な音色。
誰なんだろ?
もしかして、
学校の七不思議?
そうっと
足音を消して、
ピアノの旋律を消さないようにして、
廊下の突き当たりの音楽室の方に行くと、
あ、歌声も聴こえる。
♫
…
『廊下を走るな』
『陰口たたくな』
…
♫
あれ?
今日こんなこと誰かに言われた気がする。
そうっと音楽室までたどり着いて、
開けっぱなしになってるドアから見れば、
金色の跳ねた襟足に、
赤いTシャツ。
あ。
あの人だ。
櫻井先輩だっ。
ずうっと、
その美しい低音と、
ピアノの音に聞き惚れていたけど、
最後、
ピアノの音がぼろんとこぼれて、余韻が終わった後、
俺は、
思わず手が痛くなるくらいの拍手をしていた。
⭐︎つづく⭐︎