「なぁ。雅紀。」
「なぁに?翔ちゃん。」
夕食後、
翔ちゃんのお膝でごろごろしていると、
翔ちゃんの手が俺の髪をなでなでしてくれる。
ご飯を食べて、
お皿を洗って、
毎日のご褒美。
ごろごろ。
ふわふわ。
翔ちゃんの撫でてくれる手が気持ちよくて、
幸せになっちゃう。
「お前、なんか隠してない?」
ぎくぅぅ。
バレてる。バレてるよぉ。
「隠してるわけじゃないんだけどぉぉ。」
思わず口籠っちゃうとこが、
怪しさ満載になっちゃってるんだろうなぁ。
「なぁに?」
声は優しいくせに、
なでなでしてくれる翔ちゃんの手に力がこもる。
うん。
これはもうなでなでじゃない。
ごしごしに近い。
「こんど、火曜日おやすみなんだけど。」
「うん。
今度は、土日の休みもらえなかったって言ってもんな。
それはしょうがないよね。」
しゃかしゃか。
翔ちゃんが俺の髪の毛を撫でる。
その荒い手の動きで、
翔ちゃんの気持ちがわかるようだ。
やっぱやだよね。
おれもやなんだよ。
正直、行きたくないんだよねぇ。
「その時にね。
うちの店の松本店長が、
二人で自主研修しようって。」
「ん。松本店長?
なんだそれは。」
翔ちゃんの手が俺の頭の上で止まる。
「んー。わかんないんだけど、
ひとまず、
駅で待ち合わせなんだよね。
多分技術研修なんだと思うんだけど。
店は、営業中だから、
店ではできないし。
うちの店は年中無休だからね。
技術研修は、
休みがある本店とか、
事務所とかになるんだよ。」
はぁぁ。
思わずため息が漏れる。
怖い。
松本店長に
何怒られるんだろう。
やらかさなきゃいいんだけど。、
カリスマの松本店長と
二人っきりで自主研修なんて
やっぱ、かなりびびる。
「そっか。
業務命令なら仕方ないな。」
かなり沈黙が続いた後、
翔ちゃんが口を開いてくれる。
ほっ。
よかった。
怒ってない。
正直、怒られるんじゃないかって怖かったんだ。
「でも、雅紀。」
「はい?」
膝の上から、
くるりと体勢を変えて、
翔ちゃんの方を見る。
「業務以外のことをされたら、
ちゃんと逃げ帰ってこいよ。
お前のいる場所はここだ。」
翔ちゃんの唇が上空から降ってきて、
俺の唇を塞いだ。
⭐︎つづく⭐︎