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ビジュアル博物館シリーズ  同朋舎出版

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グリム童話   鍛冶屋と悪魔

中世への旅 都市と庶民    白水社

時は過ぎ、樹の上に一匹の黒ネコが座っていた。

 「虚しいものよ。吾輩は魔力も領地も名声もサタンの称号までも失った。ただ一つの魂のために、だが後悔は無い。全てを賭けるに値する魂だった」



 森の奥に光が見える。

 「鬼火か、あれはウィル!」

 「オセか、互いになんて成りだ」



 鬼火を纏った案山子は飛んできて答えた。

 「だが不思議と後悔は無いのであろう」

 「年の功って奴かよく解ったな」



 「いいや、何となくそんな気がしただけだ。互いに後悔は無いが失うものが大きすぎた」

 オセは暫くして、思いついた。考えを口にした。



 「ウィル、吾輩はお前を倒す。死ぬ事が出来ぬ天国にも地獄にも行けないお前を何とかして倒し、魔界に帰る」

 「好きにすればいい。どうやって殺すか考えてくれ。もう俺は人でないものだ。どうにでもなれよ」



 「ウィル、そちは吾輩を倒し契約を無効にせよ。人間としての存在を取り戻せ。吾輩から今度こそ全てを奪い去れ、この命も、この虚しさも」

 「二つ聞きたい事がある。なぜ契約した瞬間殺さなかった。出来ただろう? それとドウリの事を知っているか?」



 「趣味の問題だ。吾輩はそのような事はこのまん。それと幾らかの油断もあったがな。彼女は無事に天国に行ったよ。追放される、前に耳にはさんだ」



 「そうかい……ったく倒すだ、倒せだ、言ってる事がめちゃくちゃだな。だが、やってやる。失って人間って存在の価値が分かった。お前を倒し俺は人として死ぬ」



 こうして、鍛冶屋と悪魔の戦いは悪魔と悪霊の戦いになり、その後を知る者はいない。

樹から十字架が抜かれた。

 「さて、悪魔お前はあいつを二度も殺したって事でいいんだよな」

 「いかにも、彼女を葬ったのは吾輩だ」



 「樹から降りて構えろ」

 「やめておけ。万に一つの勝ち目のない」

 「理由じゃないな、戦いは一方の意思があればできるだろう」



 「吾輩はいいようにされた後だ手加減は出来ぬし、するつもちも無い。そもそもこの様な直接的な戦いはこのまないが……まあ最後くらいよかろう」