小さい頃母の焦り症がすごくプレッシャーだった。
朝せかせかと準備していると母はこう言った
「もっと急ぎなさい!」
わたしは十分急いでるので
「急いでるよ」
と返すと、母は
「もっと焦ってるように見せなさい!」
というのだ。

わたしは素直にそれに従った。
いま振り返ってみると、素直ではあったけど考える力のない子どもだったと思う。
いや、全く考える力がなかったのではない。
作文は得意だったし、紙に自分の考えをかきつけるのは好きだった。
うちは日常的に自分の考えを示すことがない家庭環境で、わたしはその家の平凡な子どもだったのだ。

考えを示す機会を与えてもらえる家庭環境で育てることは稀なことだと思う。
わたしはそうではなかったというだけだ。
そう思っても悲しくて、あの頃を思い出すと喉の奥がきゅっと締め付けられる。