Rina*【後】
くちびるをかさねたまま おとこのコの手がのびてきて わたしの頬にふれた
記憶はそこまでだった
ふいに私の世界をやぶって声がとびこんできた
あかり『なに赤くなってんのー
なーにかよからぬ事を想像してましたねぇー (笑)』りな『ちっ…ちっ ちがいますー
』 めぃ『あはははー…ちっちっ…ハッ
ナンチャッテー(笑っ)』かな『めぃ面白いわ~』
普段冷静なわたしもすっかり取り乱してしまった
そんな会話のさ中 チラ見すると 彼の笑顔と目が合った
私は目をそらしてしまったけど 彼の視線をずっと感じていた
陽も暮れかけた
あかりとの帰り道
手を振って別れた後
いつもの温室栽培されたラベンダー畑のよこをとおりかかると恒例のめまいがやってきた
『今日はひどいなぁ…
その場にしゃがみこんでしまった
目を開けると 彼 の顔がそこにあった
『大丈夫…?』
彼はわたしの頬にふれようと手をのばした
『きゃっ… 』
とっさにわたしは後ろにしりもちをついてしまった
『ごめん … 』
おとこのコはそう言うと スクッと立ち上がって 手を差しのべ わたしをひっぱり起こした
おしりをはらっていると彼のつぶやきが 頭の上から聞こえたような気がした
『そろそろ なおったし おいとましよう …
長居してはいけない
こころをざわめきたたせて すまない … 』
『じゃ…』
一言そう言ってわたしの手に一本のラベンダーを押し付けると ビニールハウスを囲む茂みの向こう側に見える家の方へと消えていった
それが彼を見た最後だった
後日
りな『やっぱり あの人知らない人だったのねぇ みんなで私の事 ひっかけたんでしょう?もー』
あかり『何の事ー?昨日は 風が強くなるからって 早く帰ったでしょう?』
めぃ『あはっ…?』
みんなの記憶を操作したのね …
でも なぜ?
なぜ
わたしの記憶だけ 残していったの?
そんな想いをかき消すかのように 今日もつよい風が吹いていた
*