無性に思い出す。



トレンチが悔しいくらいに似合った彼女。
寒くもないのに、襟たてて。




私「なに襟立ててんの...ファンデ付くじゃん。
キザってんのね~」

彼女「...そういうとこが好きなくせに(笑)」

って軽口叩きながら、
冗談とも本気ともつかないことしてた。


振り返れば、バカみたいな関係。
薄っぺらくて、
続ける勇気もなくて。
お互いを脅かすような、危なっかしいこともたくさん。


会う度、これが最後かも、と思ったし、
メールも返信がないのに慣れようとした。

東京に来る日が近づくと、
わざと着信音をその他大勢と一緒にした。
期待しすぎないように。


秋になって、
街にトレンチが溢れる束の間だけ、
そんなことばっかり思い出す。



別れてから、
トレンチは着てない。