番号札を呼ばれ先ほどの診察室に入る。
ドキドキというものはなくただ自分の全てが”無”になっていた。
泣く事も恐れる事もなくただイスの場所を確認そして座る。前には先ほどの先生。
机には私達の見えるよう向けられた紙。
一目で診断書と分かった。私は直ぐ目をそらし下を向き先生の言葉を聞いた。「診断の結果なんですけど‥赤ちゃんは病気です‥病名は‥」先生は淡々と病名を告げた。
私は聞きとる事が出来ないのではなくしなかった。だけど自然に視線は目の前の紙に向いていた。
二分脊椎
水頭症
キアリ奇形
立て1列に並ぶ病名。 紙に文字を並べるのは本当に簡単だ。
ただこの紙一枚は私達にとってはこの先何十年もそして永遠に背負う1つの意味になる。
先生は病名そして病気の詳細、ある程度予測されるであろうある程度の予後について話した。
私は無言で聞き旦那くんは1つ1つの先生の話に確認しては質問を繰り返した。本当に旦那くんはしっかりしていて適切な行動を取る事を改めて感じた。その場も完全に旦那くん任せになり私はひたすら病名を見つめ自分に問いた。
何がいけなかったのか。
母親失格。まさしくこの私に相応しい言葉だった。
赤ちゃんを信じる事もせず目の前にある現実すら受け入れず目を背けそこにいる自分は母親の姿をした母親ではなかった。
先生の話はまだまだ続いた。今後の受診予定、内容、出産の流れ。旦那くんは仕事用のスケジュール帳を開きひたすらメモを取り予約に対して自分のスケジュールをあけようと必死だった。
私はその姿を見て自分がこんなんじゃダメだと強く思ったけどその場での切り替えは難しかった。
1週間後に胎児のMRIを取り正確な診断と出産後についてお話します。との事で長い初診は終わり病院を出た。
病院を出てもまともに会話出来ず静かに車に乗り込んだ。旦那くんが「お兄ちゃん帰ってきてるし今日は疲れたやろ?晩飯簡単なんでいいから買って帰ろか!!」と車を走らせた。
普段通りの旦那くん。
旦那くんなりにかなり踏ん張ってくれていた。
私は自分が情けなくそして必死に支える事を考えてくれる旦那くんに本当に申し訳なく何より赤ちゃんに対してその時言葉に出来ない感情におそわれた。
悲しいのか。罪悪感なのか。愛しいのか。心配なのか。
今もその時の気持ちは言葉にできない。
帰宅して直ぐお兄ちゃんに晩御飯を作り家族で簡単に夕食を済ませお兄ちゃんが寝た後夫婦で話あった。
「とりあえずこの病気は確定かな。今後どうなるか全くわからんかな。」という感じで話し合ったと思う。
私は旦那くんに単刀直入に聞いた。「かなりショック受けたんじゃない?」
これを聞くのに私はかなりの勇気が必要だった。
旦那くんは少し考え答えた。
「ショックじゃないってゆったら嘘になるけど、正直まさか自分の子がって思ったけど‥でも、そんなん考えても仕方ないやん。」
と、答えた。
私は旦那くんらしい答えに少し安心した。
「とりあえずMRIの時俺も仕事調整するからそれまであんまりいらん事考えんでいい。」
と言いそこから切り替えたように普段通りの時間が流れた。
旦那くんも色々とかなり悩んだり考えたりしていたと思うけど表に出さず普段の自分を貫き通した。
それでも晴れない表情をしている私を見ると
「家庭が暗くなるのだけは俺はイヤやで!!」
と言い少し遊ぶ素振りをした。
この時の言葉は今の私が常に心がけている大切な言葉です。
次の受診まで1週間。
また長い長い時間を過ごす事になりました。
ーつづくー