やはり私は剣道が好きだから和登千代子が好きだし、「長い冬の時代」の後の手塚治虫先生の新たなヒーローである写楽保介も、『ブラック・ジャック』の主人公・間黒男以上に好き。

写楽保介が持つヒーロー性は『鉄腕アトム』のアトムに『人間ども集まれ!』の天下太平&天下未来の親子の要素である「戒めと愛」が加わったから「自分自身が持つ心の負の普遍性と向き合う」ことでもあり、その点を実感できたのが、アニメ版『三つ目がとおる』視聴世代の作家が描いた『三つ目黙示録 悪魔王子シャラク』です。





『三つ目黙示録 悪魔王子シャラク』というリブート版『三つ目がとおる』からは、絵柄は違えど手塚治虫先生への敬意を強く感じ取れ、「漫画に必要なのは風刺と告発の精神」を徹頭徹尾保ち続け、「怪植物ボルボック編」や「王子ゴダル編」をアレンジし、『バンパイヤ』や『ブッダ』を意識した設定や演出もあり、テレビ東京版ではアニメ化されなかった「グリーブの秘密編」の要素もありと、「人間は文明の方向性を考えなくてはならない」と問い続けるリブート版です。




アニメ版でのタカシに相当する女性キャラも登場します。

『三つ目黙示録 悪魔王子シャラク』での写楽保介。三つ目族であることを安易に誇らず科学を過信しない心の強さからは『ブラックジャック』の間黒男に近いヒーロー性があります。









今となっては1977年の時と比べ、『三つ目がとおる』本編での「古代王子ゴダル編」に登場したレムリア国の王子・ゴダルのほうがさらにマシだと思う。



手塚治虫先生の戒め
 基本的人権を虚仮(こけ)にしてはならない
戦争や災害の被害者を虚仮にしてはならない
特定の職業を虚仮にしてはならない
国民や社会的弱者を虚仮にしてはならない
作家は権力の側に立ってはならない



『三つ目がとおる』本編での「古代王子ゴダル編」に登場したレムリア国の王子・ゴダルよりも強いインドラ王子には核兵器を非難する良識がある点にも注目。



写楽保介は『三つ目黙示録 悪魔王子シャラク』が一番強いと私が感じるのは、原作ほど力を過信せず、自分自身の心の弱さを自覚し、文明の方向性を考え続ける謙虚さから生じた強さを持ち、勇気だけでなく優しさも磨かれたことで得た信と惻隠の心が輝いているからだと想います。



仁:思いやり
義:人としての道を踏み外さない
礼:礼儀作法を守ること
智:正しい判断・知恵
信:信頼・誠実





惻隠(そくいん)の心
「弱者、敗者、虐げられた者への思いやりと共感」という意味で、
「人を思いやる心」



今年はアニメ版の最終回から30年になりますが、スーパーボルボックはどんな花を咲かせるのでしょうか…?