以前、私は『鬼滅の刃』が好きな方に山口貴由先生の『覚悟のススメ』を勧めました。






ただし、山口貴由先生のファンは山口貴由先生のマンガが好きだからこそ、『シグルイ』を他者に軽々しく勧めていないことを、我々は気をつけて考えなくてはなりません。




私も『シグルイ』を読みましたが、山口貴由先生の『シグルイ』は『鬼滅の刃』が好きな人でも安易に勧めることはできない内容・展開でると早い段階で感じ、私自身は『覚悟のススメ』が好きだからこそ、『シグルイ』よりも先に『エクゾスカル零』か『蛮勇引力』を読むべきだと考えています。








何故私がだけでなく山口貴由先生のファンが『シグルイ』を安易に勧めない理由は、山口貴由先生曰く、隠されたテーマとして

『閉塞状況下における軍隊の「支配」と「服従」の姿を「武士」の世界に置き換えて描写したもの』であり、それを描くことが山口貴由先生自身も苦痛となり精神的に深いダメージを受け、『勧善懲悪のヒーロー漫画』が描けなくなってしまったからです。





予め『覚悟のススメ』の第10巻(愛蔵版第5巻)の第91話「怒死」を実際に読むと把握でき、『シグルイ』はある意味「15巻も続く黒手塚マンガ」と例えることもできる内容です。







『シグルイ』とは、ある意味では『覚悟のススメ』に登場した「葉隠四郎の狂気」の暗喩であり、内容は我々の未来に対する警鐘にして「人類は何も学ばないままだと破滅する」と訴えています。





『鬼滅の刃』6巻の「冷酷無情」にて「パワハラ会議」という、『閉塞状況下における軍隊の「支配」と「服従」の姿を描写した』愚挙を犯した鬼舞辻無惨の末路を知っていれば、今読むと『覚悟のススメ』に登場した犬養忍と『シグルイ』の藤木源之助が重なります。






それでも山口貴由先生が『シグルイ』を描き続けたのは、山口貴由先生が持つ手塚治虫先生や宮崎駿氏への敬意があるからこそ、「漫画に必要なのは風刺と告発の精神」を忘れなかったからだということが判ります。


『覚悟のススメ』より



実際に、『覚悟のススメ』のアニメ化に際、山口貴由先生は、戦争や犠牲を賛美しているわけではなく、理不尽な侵略を許さず、牙を持たぬ人のために起つ戦士の決意と無償の愛を謳った紛うことなきくじけない歌「覚悟完了!」を作詞したのだから。






手塚治虫先生の戒め

基本的人権を虚仮(こけ)にしてはならない
戦争や災害の被害者を虚仮にしてはならない
特定の職業を虚仮にしてはならない
国民や社会的弱者を虚仮にしてはならない
作家は権力の側に立ってはならない