~ゲームカタログ@Wiki ~名作からクソゲーまで~にて綴られていた、『フロントミッション3』が、
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この投稿は先程の続きからとなります。
シナリオ
本作はシリーズ唯一の、ダブル・フィーチャー・シナリオなるシステムを採用している。
- …要するに冒頭の些細な選択肢で「エマ編」と「アリサ編」に物語が分岐するという、よくあるシステム。
だが、この"DFS"は大まかなルート・目的自体は共通しているものの、内容自体は単なるザッピングシナリオではなく、全く異なる物語が繰り広げられる。- 一方のシナリオで深く関わり、仲間として共に戦った人物が、もう一方では単なる敵として登場するドライな、しかしその人物の事情を知っているだけに複雑な心境となる状況も。勿論逆のパターンとして「ただの敵」であった人物の深い人物像を知ることで得られる楽しみもある。
- 大抵の場合敵側になった相手を殺してしまう。アリサ編を先にやって二周目のエマ編でリュウを殺すと罪悪感がすごい。逆に死ぬはずの人物が助かったりする。
- 同じエマ編やアリサ編でも分岐があり選択によって生死が変わる。大抵は楽なルートを通ると誰か死ぬ。カーゴを逃がすとハッタが死ぬ、正面突破を選ぶとホセが死ぬなど。
- 立場や視点を変えることで分かってくる「人物の二面性」を意識したキャラクターの描き分けが行われており、特に主人公の和輝と、それぞれのシナリオのキーパーソンとなるエマ、アリサにはそれが顕著に表れている。
- 設定資料集によると、エマ編の和輝は『優しさや清らかさを表す「白」』、アリサ編の和輝は『強さや熱情を表す「赤」』というイメージで描かれているとのこと。エマ編では不器用なりにエマを気遣い、アリサ編では何としてもアリサを守るため、荒々しい手段もいとわない。プレイしているとその辺の違いが分かってくる。
- エマ編とアリサ編で難易度やキャラクターの絡みも変わる。アリサ編の方がEDは大仰でラスボスも強力だが内容はライトである。エマ編はバランスよく難易度が推移していき、シナリオでは残酷な現実を突き付けられる。
- 一方のシナリオで深く関わり、仲間として共に戦った人物が、もう一方では単なる敵として登場するドライな、しかしその人物の事情を知っているだけに複雑な心境となる状況も。勿論逆のパターンとして「ただの敵」であった人物の深い人物像を知ることで得られる楽しみもある。
作品の主題として、本記事冒頭でもタイトル画面から引用した『人類は何も学ばない』というテーマがある。
- FMシリーズを通して描かれてきた人の業。時間軸上では最も未来に位置する本作においても、他人を顧みず、自らの弱さに向き合わない狭い心から争いが始まる。
- DFSによって分かれる2つのシナリオはいずれもハッピーエンドを迎えるが、歴作と同じく、それは単純なハッピーエンドと言い切ることはできない。
国家の利害関係から生まれる陰謀、生命倫理の軽視、いたずらに国を疲弊させたクーデターと、歴作で描かれた負の系譜は本作にも根付いている。 - 現在からおおよそ100年余り先の未来が舞台ではあるが、多少の技術発展はあるとはいえ、そこで描写される社会は現在のそれと何ら変わらず、技術レベルも目新しいほど進歩しているわけではない。
非人道的な政治的駆け引きや富の偏り、前時代的な一党主義国家等々。また、99年当時から問題となっていた「遺伝子操作の問題」が物語の重要な位置を占めており、歪んだ研究から生まれた存在と主人公たちは対峙することになる。こうした現代社会との共通点を随所にちりばめることで、人類の負の普遍性と、人類の存在価値への疑問が暗に示されている。
- DFSによって分かれる2つのシナリオはいずれもハッピーエンドを迎えるが、歴作と同じく、それは単純なハッピーエンドと言い切ることはできない。
と、このように深く重苦しいテーマが込められている本作だが、実際にプレイするにあたっては、そこまで気負うことなく、さくさくと遊べる。
- 世界をあちこち転戦するという今までのFMシリーズではなかったヒーロー作品調のストーリーライン。次はどの国へ、どの地方へ向かうのか。そこでどんなドラマが待っているのかと期待させてくれる。展開上、日本と大漢中人民共和国(現在の中国)の比率が高いのはやむなしか。
- 歴史考証が良くできていて現実の中国やフィリピンの情勢とも良くシンクロしている。結構凄い。
- 主人公と親友が学生であることもあいまってか、コミカルな描写が増えている。ベタではあるが燃える、笑える、ほろりと来る部分も多く、安心してプレイできる。
- 前述したような3D演出によってテキストのみに頼らない作劇ができるようになり、なおかつテキスト部分もネットワークシステムの進化によって更に多彩な描写ができるようになったことを最大限に生かしている。
- ネットワークシステムには様々な裏設定なども散りばめられている。ゲーム序盤にある人物のメールを見てメンバーで和んでいると思いきや、添付の画像を変換すると実際はストーリーの深部に関わる内容が含まれている。
- 『100年後のスクウェア』『劇場版フロントミッション』『100年くらい前のゲームのコスプレ写真』などの笑える内輪ネタも多い。
- 前述したような3D演出によってテキストのみに頼らない作劇ができるようになり、なおかつテキスト部分もネットワークシステムの進化によって更に多彩な描写ができるようになったことを最大限に生かしている。
難点
- パーツ・機体関連
- 「1つのパーツを長く使う」事になる以上、余りに大量のパーツを出しては捌ききれなくなってしまう。このため、歴作に比べて機体パーツの種類が少なくなっている。武器腕や戦車型・車両型脚部パーツに至っては全削除され(*3)、キャノンやバズーカといった一部の武器カテゴリも廃止されている。
- 「使用する意義がなくグラフィックもほぼコンパチ」の有象無象パーツを一掃し、簡略化したとも言えなくもないが、やはりどこか寂しい。敵のみが使用するカテゴリもあるのは不公平感がある。
- もっともこの点に関しては「敵の機体を強奪する」システムで補完されているので、相手のヘリコプターや戦車や大型兵器に乗って敵の武器を使用することは可能。
- 左右の腕に別のパーツが装備できるのが不格好。
- 自由度は確かに高いが、シールド装備の腕は軽くてHPの高い格闘機の腕にする、など定石が決まっているので、最終的にできるヴァンツァーは大抵見た目のバランスが悪くなる。
- 腕パーツは左右で統一するべきだったと言える。美観の問題は重要で、後に発売されるこの手のロボットゲームでは腕パーツが左右同時に変わることがほとんどである。
- 「1つのパーツを長く使う」事になる以上、余りに大量のパーツを出しては捌ききれなくなってしまう。このため、歴作に比べて機体パーツの種類が少なくなっている。武器腕や戦車型・車両型脚部パーツに至っては全削除され(*3)、キャノンやバズーカといった一部の武器カテゴリも廃止されている。
- スキル関連
- 小型スキルには幾つか容量パフォーマンスのよすぎるものがあり、大型スキルの不遇に拍車をかけている。あと一歩の調整が欲しかったところ。
- 具体的には弾数UPIが強すぎる。これを6つ装備するだけで勝手に連続発動してボスであろうとも相手を一方的に葬り去ってしまう。
- ズームI、熟練1↑、人間DMGI、タックルIも1スロットの連続発動常連で何も考えずに6つ装備しても普通に強い。強すぎる。なのに初期機体で全部覚えられる。
- スタンパンチ、fallショット、パニックショットも相手にステータス異常を与える極悪スキルにも関わらず1スロット。連続発動が止まってしまうのが唯一の欠点。
- AP3割カットも強力なスキルでAPを節約するだけでなくコンボ率が高いため1つ入れておいて損はないレベル。これも1スロット。
- 極めつけは相手を強制排出させるイジェクトパンチ。そのままパイロット殺して相手の機体を無傷で強奪。あまりにも強すぎてなぜ1スロットにしたレベル。
- 特定条件下限定のスキルでもパーツ説明には曖昧な発動条件しか書いていないため、発動条件が解りづらく習得に時間がかかるスキルがある。
- リベンジ系統など全く実用性のないスキルがあり、わざと自分の攻撃力を下げないと覚えられなかったりする。
- エスケープやデッドマシンなどのレアスキルも、シミュレーターでわざと弱い機体で出ないと、ほぼ覚える機会がない。
- 前述の通りバトルスキルの引き継ぎが可能な本作だが、スキルの設定は最序盤のミッションを幾つかクリアした後に行えるようになるため、しばらくは初期状態のまま頑張らねばならない。
- 初期機体のスキルを覚えきっている場合、新しくスキルを覚えられないので非常に苦戦することになる。
- 機体と資金が引き継げない事に不満を呈すユーザーも。引き継げたらゲームバランスがおかしくなることは間違いないが。
- 小型スキルには幾つか容量パフォーマンスのよすぎるものがあり、大型スキルの不遇に拍車をかけている。あと一歩の調整が欲しかったところ。
- その他
- この時期のスクウェア作品に共通する欠点として、チュートリアルと一部のムービーが飛ばせない。
- スタート押しっぱなしで加速は可能。それでもやはりチュートリアル強制で長時間眺めるのは周回プレーでは苦痛。
- フォーラムには所謂「更新履歴」機能がないため、更新されたかどうかいちいち確認して回らないといけない。一応「お気に入り機能」はあるが使いづらい。
- ユーザーが余りアクセスしないであろうマイナーフォーラムの内容は少々しょぼい。総数が多いため、重要度の高いものを優先したのだろう。
- フォーラムやシミュレーターのステージの入手時期が決まっていて、逃すと二度と取れない。分かりにくい箇所もあり初心者には不親切。
- この時期のスクウェア作品に共通する欠点として、チュートリアルと一部のムービーが飛ばせない。
賛否両論点
- その男、武村和輝
- 本作をフルに楽しめるか否か、そこは和輝の言動を許容できるかどうかという部分が大きい。少年漫画然としていながら癖が強く、ユーザーの共感性が低めになりがち和輝は特に歴作プレイヤーからの不評を買った。どこか影があり、熱血とは程遠かった歴作の主人公達とのギャップが余りに大きかったことも原因であろう。
| - | 彼を一言で言い表すなら「熱血シスコン石頭」といったところだろうか。
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- 今でも和輝はシリーズで最も好みの分かれるキャラクターとして認知されているが、エマ編の終盤での行動を我々がどう考えるか、現実世界と照らし合わせることで好きだという人も多い。
- ちなみにFMシリーズの大手ファンサイト「TEN-MOU」で行われている非公式のキャラクター人気投票では、エマ編終盤での評価が高いこともあって、和輝は大体3位~5位辺りの順位をキープしている。
- 大幅に変わった作風
- 本作は殆ど「リニューアル」と言ってもよいほどに、これまでのシリーズとは異なるシステム・BGM・ストーリーテリングの要素を持つに至った。当然、これまでのシリーズに慣れ親しんだユーザーの一部からは戸惑い、または批判の声が上がった。
- 特に「初期機体がゼニスではない」「主人公が未成年」「ロボアニメ的な作風」「日本が舞台の一つ」といった部分は、ユーザーに強いインパクトを与えた。
- 個性的な外観の大型機動兵器やビーム兵器を装備した機体を「世界観にそぐわない」と敬遠するユーザーも。
- 作風に関しては完全な個人の好みの問題である。ただ前述の和輝の件も相まって「好き嫌いの差はシリーズ中最大」であることもまた事実。
- 好みの問題と言えばそれまでであるが、ゲームとしての完成度はともかく、他のロボットゲームなどにはない重厚な世界観というフロントミッションシリーズの根底にある「らしさ」に大きい影響を及ぼしているのは事実。下記のその他に記載されている「シナリオの暗部の補足が足りない」も同様に「好みの範疇」と書かれているが、フロントミッションの世界設定を利用した二次創作といってもまったく過言でないほどの変貌ぶりは「好みの問題」でかたづけられるものではない(太田垣康男の『フロントミッション ドッグライフ&ドッグスタイル』も『フロントミッション3』とは真逆の方向性での変貌ぶりにも非難があるが)。
- 本作は殆ど「リニューアル」と言ってもよいほどに、これまでのシリーズとは異なるシステム・BGM・ストーリーテリングの要素を持つに至った。当然、これまでのシリーズに慣れ親しんだユーザーの一部からは戸惑い、または批判の声が上がった。
- その他
- 「民間人が戦いに巻き込まれるお話」ではお約束の「人殺しに向き合い、迷いを断ち切る」描写が薄いことに難色を示すプレイヤーも。それまで戦争とは縁遠いところにいたはずの和輝たちだが、やたらあっさりと戦闘に順応してしまう。アリサ編序盤における亮五の台詞「人殺しにはなりたくない」が、その後は完全にスルーされるなど、シナリオ暗部の補足が足りないとの指摘がある。
- これも個人の好みの範疇に入る課題ではある。また本作のゲームシステムを考えると、そうしたイベントを描いているとゲーム面での折り合いをつけるのが大変になってしまうのも事実。
- 簡略化された戦闘デモは全体的に好評を得ているが、『2nd』派からは「動きのダイナミックさ・重厚さがなくなった」との声もあった。
- 「民間人が戦いに巻き込まれるお話」ではお約束の「人殺しに向き合い、迷いを断ち切る」描写が薄いことに難色を示すプレイヤーも。それまで戦争とは縁遠いところにいたはずの和輝たちだが、やたらあっさりと戦闘に順応してしまう。アリサ編序盤における亮五の台詞「人殺しにはなりたくない」が、その後は完全にスルーされるなど、シナリオ暗部の補足が足りないとの指摘がある。
総評
前作までの不満点を見事に解消すると共に、優れたゲームシステムを構築した集大成的な作品であり、シナリオの新たな方向性を模索した意欲作でもある。一方で前作の不満点をフロントミッションの世界観や雰囲気にそぐわない形で払拭された部分で受け入れられないファンも多い。
フロントミッションのナンバリングとしてではなく、単体のSRPGとして見れば間違いなく名作~傑作の部類に入る作品であろう。
しかし、「硬派で渋い重厚感のある」フロントミッションの世界観が好きなユーザーや、軍人ではない上に突飛な主人公の性格が受け入れられなかったプレイヤーから「こんなのフロミじゃない」「フロミでやる必要があるのか?」などと叩かれることも少なくない。
FMシリーズは作品ごとの良点・欠点が分かりやすい傾向にあるが、本作はとりわけ既存作との差が激しかった事が災いしたといえる。
気軽にさくさくプレイでき、なおかつ尋常でないボリュームをもったシミュレーションバトル。
ノリこそ軽いが熱い部分が光り、クライマックスの重い展開は他のシリーズにも劣らないシナリオ。
90年代末期の熱気と、制作陣の熱意が伝わってくる作り込み。
ゲームアーカイブスで手軽にプレイできるようになった今、フロントミッションの一つの終着点をぜひ体験してもらいたい。
余談:機動警察パトヴァンツァー?
日本アニメ史に燦然と輝く押井守監督の2作品『機動警察パトレイバー the Movie』(劇パト)と『機動警察パトレイバ―2 the Movie』(劇パト2)。
本作にはこの二作を強く意識したような点が妙に多く見受けられる。
| + | 類似点・三作品のネタバレ要素を含むので注意
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ちなみに警察がらみのネタとしては他にも、ドラマ『踊る大捜査線』のパロとして、『もえる大捜索線』なる映画の撮影に日本警察がヴァンツァー隊を出して協力した、という情報が日本警察機構のフォーラムで掲載される。また、本作の登場人物の一人「新条美穂」のモデルは、『踊る』の登場人物である、水野美紀氏が演じた「柏木雪乃」であることが知られている。