今日は『フロントミッション3』発売20周年となる日ですので、『フロントミッション3』のテーマの重さを踏まえた「エマ編のもしもの未来」の物語を描きたいと思い、剣道再開後から考えていた短編小説を投稿することにしました。

 

 

 


※『フロントミッション』シリーズで異質な主人公・武村和輝が何故、異様に強いのか?何故、彼はルカーヴに対して正しい返答ができたのか?を自問自答しつつ、和輝の父・伊佐夫が剣道の段位を所持しているという設定、格闘武器に関しては、「パイルバンカー」のウォルター・フェンや「ナックル」のダリル・トラウベルとは主人公の格闘武器から把握しやすくする個性化も兼ねて、剣道家という設定を追加した二次創作の小説です。

 


※拙い文章ですし、リアリティを求めすぎる方は、できれば読まないでください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


全日本実業団剣道大会の観客席で、数名が霧島重工に所属する、とある剣士のことで会話していた

 

 


「あの男が世界を救ったって?」

 

 

「信じられんよ、この日本が戦場になった次の年の春、USNの国際会議場に2機のヴァンツァーが館内に乗り込んだ男女の男のほうが、ここにいて目の前に立っている剣士だなんて。」

 

 

「俺もあの時、ネットで国際会議場での実況を見たんだが、今でもこの驚きを忘れないさ。佐々木とかいう奴が、あの男ともう1機のヴァンツァーに乗った女の命を奪おうとしたが、逆に返り討ちにされたことも」

 

 

「あの武村という剣士、すごい有名なヴァンツァー乗りでありながら、人目を臆することなく、実業団剣道大会に出場するんだし、あの男が乗っていたヴァンツァーがマシンガンの攻撃に耐え抜き、逆に佐々木のヴァンツァーを左腕の一撃で殴り返した、というからすごい男だよ、鬼神というより、“魔神”としか言いようがない」

 

 

「“魔神”か…真なる仁、ってことかな。日本を守るためだー、なんて言っていたけど本音は違い、“グリムニル”とかいう後先すら真剣に考えないテロ組織の共犯者の佐々木に止めを刺すこともできたのに、あいつはしなかった。だが、愚かだとは思わんよ。あの後、世界中で“グリムニル”のテロ活動も無くなったっていうから。多分、佐々木は“グリムニル”の事も吐いたんだろうさ。武村は勇気もあるし、優しいとはいえ、舐めてかかると剣道以外の場、特に戦場で敵に回すと下手すりゃ命を失うかもしれないな、もちろん俺たちのほうが」

 

 

「侵入方法も、命を平気で奪うテロリストなんかには絶対できるようなやり方ではないし、国際会議場の外を警備していた警察用ヴァンツァー4機のパイロットは誰も命も奪われなかっただけでなく、後遺症すらない、と聞いたことがある。しかもあの男と一緒にいたメンバー全員、誰も咎められなかった、というのもそれなら嘘ではないな」 

 

 

「心が読める、とまではいかなくても、心を感じ取れるんじゃないかな?高段者でも何名か彼と最初に稽古や練習試合をしたのだって負けたという話も風のうわさで聞いた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


――俺のことが気になってしまう周囲のことは理解できるし、納得もできる。無理もない。インターハイで有名になりやすい通常の高校の出身ではなく高等専門学校に通っていたのというのもあるし、エマと会う日までは亮五とともに、優秀なテストパイロットだと、霧島重工でしか話題にならなかったのだから尚更だ。

 

 

 

 

 

「何故、お前は同じ過ちを犯そうとする!」

 

 

「自分の過ちに気づかない者に何ができるっていうんだ!お前には何も救う事などできない!!」

 

 

 

 

 

 

 

今では誰も彼のことを、愚かだの、馬鹿だの、他者を蔑む悪意に満ちた冷たい言葉で罵倒してくる人間はここには誰一人いなかった。USNの国際会議場の件以来、真に強い心を持つ彼を見下した者は誰もが負けた。しかし、彼は学ぶことで再戦することを願い続ける「惻隠の情」、すなわち慈愛の心を持っていたからこそ、誰もが彼を恨むどころか憎むことさえせず見直し、「仁義礼智信」を再認識し、敬意を抱くようになり、彼と闘った剣士は皆、精進していった。

 

 

 

 

 

 


―霧島重工 武村-

 

 


垂ネームからすぐわかる彼に関して

 


霧島重工のテストパイロットにして、霧島重工剣道部一の強者と謳われる剣士、武村和輝。USNの国際会議場の件の後、テストパイロットに復帰できただけでなく、剣道を再開し、横須賀高等専門学校を卒業後、霧島重工剣道部からの誘いを受け所属し、30歳を超える彼の顔からは凛々しさと逞しさだけでなく、心の美しさをも感じさせるものがあった。

 


和輝は中学入学後すぐに剣道初段に昇段審査合格から数か月後、彼の母の死後、父・武村伊佐夫と不仲になった後は剣道の稽古に行くことは少なくなったが、彼の剣士としての才能は本格的に剣道を再開後さらに開花し、霧島重工剣道部の監督が興味を持ち、横須賀高校専門学校を訪れ、実際に見てから誘うことにしたほどであった。

 

 

和輝は胴と垂だけでなく、面も小手も含めた剣道防具を全て身に着け、次の試合に備えつつ、正座しながらエマと出会った時の事、ルカーヴの事、今まで出会った多くの仲間のことを思い出し、眼をつむっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


和輝の記憶、それは、たいていの人間に体験することは殆ど無い道であり、並の人間にとって過酷であるだろう彼の過去

 

 

 

 

 


「エマ…あんた、これが何だか知っているんだな?」

 


一瞬だったが、奇妙な既視感があった。今まで自分が行ったことが無い工場と思わしき場所で、どこかでおぞましい出来事を見た時のことを。ヴァンツァーに乗った日防軍に襲われた時、実戦なんて一度もしたこともなかったはずなのに、咄嗟に反応し、生存本能が沸き上がるのも感じた。急いでいたその時は考える余裕はなかった、だが今ではどうしてなのかは理解できる。

 

 

 

 

 

 


「ヴァンツァーのセットアップが上手になったなぁ、和輝。今までセットアップが苦手だったのに、驚いたよ」

 


「…そうか。…緊張感が逆に集中力を高めたのかもな」

 


「緊張しすぎてストレス溜めんなよ」

 

 

「ああ」

 

 

今振り返ると亮五の指摘の発言から感じ取れるが、日本を出た前後から変化の兆しがあったのかもしれない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何度も言わせるな、お前は主人などではない」

 


「くくく、私がゴミだと? 自分の立場をよく考えたほうが良いぞ」

 

 

アリサとエマの事を詳しく知ってしまい、その翌日にルカーヴに対して許さないと言ってしまったのに、ルカーヴと親父を憎んだのに、何故か2人と和解したいという自分もいた。

人をゴミ扱いするような奴らは俺も嫌いだ。それは幼いころから変わらない。

アリサが日本に来てしばらくの間の事を今でも忘れていない。それは親父…父、ルカーヴも同じだ。

 

 

 

 

 

 

 

 


「違う!エマやアリサは危険な存在なんかじゃない!」

 

 

あの時は知らなかった。

ルカーヴよりも危険な存在が数十年前からも、その時にも潜んでいたということを。

 

 

 

 

 

 

 

 


「違う!エマもアリサも血の通った人間だ!操り人形なんかじゃない!」

 

 

あの時は気づかなかった。後にエマから知ったが、グレン・デュバルも血の通った人間で、酷い目に遭わされたことを後に知った。グレンの事に関して、後にエマに尋ねてしまった程気になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おやじー!」

 


「許さん、断じて許さんぞ!ムシケラの分際でここまで私を愚弄するとは! 貴様らの命で償ってもらおう!」

 

 

 

俺は、逆上し、怒り狂ったルカーヴの言葉を聞いた瞬間、俺は父を殺めたルカーヴに絶望し激怒しそうになったが、心の奥底から自分であって自分でない“超自我”といえる存在の想いを感じた。

こんな結果を俺は父とルカーヴに対して望んでいなかったという心の片隅に在った想いに応えるかのように。

 

 

 

 

 

 

 

『ルカーヴがあの言葉を向けたのが悲しい、彼を止めなくては。彼が人間をムシケラ呼ばわりしたかったのは理解できる』

 

 

 

 

 

 

俺は自分自身の心の奥底にいる存在を知りたいという欲求も生じていた。

何故ルカーヴに対して異様なくらい冷静に想うことができたのか知りたかった。

それは難しそうであまりにも理解しやすい答えだった。

 

 

 


今想いかえすと、「超自我」に他者を思いやる心があれば難しいことではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルカーヴの矛先は間違っている。

だが、激怒しても簡単には解決できない。僅かながら迷いが生じた。では、俺は如何すれば良いのだろうか、と自分自身に心を一瞬だけ委ねた。

 

 

自分自身と「自分の超自我」の心を隔てていた壁を崩した。互いの想いを正しく理解したいという心境から導かれた結果だったのかもしれない。悲劇や悪夢が繰り返される世界を終わらせたいと、新聞やニュースを見ながら心の奥底で俺は願っていたのも事実。

 

 

それは数秒の出来事だった。

ルカーヴに対する怒りは本物だが、ルカーヴよりも許せない存在どこかにいると感じ取れる自分もいて、俺は怒りを可能な限り抑えることができ、返答した。

 

 

 

 

 

 

 


「…手加減なしだ。 手を抜けば、お前が死ぬことになるぞ。本気で来い!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


同時に俺は、自分が自分でなくなっていくはずなのに、自分ではない存在が自分自身になっていく、ある意味結果的には自分自身のままであるという、恐怖ではなく不思議な安心感があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はルカーヴの心の暴走を止めることができた。そしてルカーヴは言った。

 

 

 

「MIDASがある限り、人間は愚かな行為を繰り返す。そうなればいずれ世界は滅ぶんだ。この私だけが世界を救うことができた。この私だけが…」

 

 

 

ルカーヴは、自分の命以上に大切なものが有り、自分の死よりも、世界が破滅するのを憂いていた。

破滅するよりは、欲や邪念を抑え、静かに穏やかに暮らせる世界を作りたいと望んでいた。

 

「和輝たちには絶対に世界を救えない」と断言しなかったのも、心の底では俺たちが世界を救って欲しいと望んでいたし、ルカーヴは和輝と戦っても良いことにはならないと悟り始めていたし、和輝の力があれば世界を救えると信じるようになっていったことも。

 

 

 


ルカーヴにとって俺は「心の光」であり、数少ない縋れる存在だった。

 

 

 

 

 

 

 

挫折しそうになった時、アリサの最後のメールを読んだ後、アリサの想いが伝わった。

 

 

アリサの想いを理解した瞬間、すれ違う悲劇を繰り返さぬよう、生きねばならないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「…そうか。和輝、あの時何故私を見捨てなかったんだ?」


「仲間だろ、見捨てられるかよ」

 

 

 

 

 

逆上し、怒り狂ったルカーヴに絶望しそうになった時、その言葉を打ち捨てようとしていたのを俺自身は留めた。

だからこそ、今ここに俺がいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「真実を知った人々の怒りを止める事はだれにもできないのでは?」

 


「他の人が無理だからこそ私たちがやるんじゃない!」

 


「無理を通してみせるッ!!」

 

 

 

USNの国際会議場へ乗り込む計画を立てた際、デニスも少し不安視した程周囲からは無理だと言われたが、エマと共にすぐさまスペースシャトルを使う手段を考え、発案することができた。

他者を使い捨てることしか考えようとしない、「グリムニル」のモーガン・ベルナルドには不可能な手段を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この石頭め!」

 


「これまでか…殺せ」

 

 

そして俺自身の心の奥底に佐々木の命を奪いたいという衝動が沸き上がったのを感じた時は

 

 

 

 

だめだ! 

あんたはこれから自分がしてきたことの責任を取るんだ!

逃げることは許されないぞ!

 

 

 

 

 

止めてなければ本当に命を奪っていたのかもしれない。

 

 

 

 

 

権謀術数を弄する輩を許せない自分自身とは、アリサが日本に来た当初の事もあったし、エマから知ったウォルター・フェンの友人であるグレンの人生を狂わせたモーガン・ベルナルドの“共犯者”が、俺の眼を通して目の前にいた上にエマの命を奪おうとしたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

誰もがルカーヴと同じように“魔王”になりえる可能性があると痛感した。

 

俺は父を憎んだ時は誰も信じられなくなる可能性もあった。決して“魔王”になる可能性を忘れてはならないことだ。

だが、グチャグチャになりそうだった俺の心を、「惻隠の情」が形成されていた俺の心の奥底で支え、保ってくれた。

おそらくルカーヴの心が完全に壊れなかったのも、俺の“仲間”という言葉で人間に愛想が尽きなかったからだろう。

 

 

 

 

 

 

 


「俺は、お前を死なすためにここまで頑張ったわけじゃない! これ以上誰も死なせない!」

 

 

「君は生きている限り、償いを続けるんだ!」

 

 

 

 

 


この言葉は俺自身への言葉にもなり、この言葉があるからこそ、俺はエマを信じ続け、父とルカーヴの事を少しずつ赦すことができた。それは永遠に変わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


エマ「再びMIDASの悪夢が起きぬよう呼びかけていくつもりです」

 

 

この時の俺は既に、エマを完全に赦すことができるほど心が強くなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだな、必ず戻ってこよう。その時は新しい家族も一緒にな」

 

 

この時俺は笑顔を取り戻すことができたんだと思う。

 

ルカーヴにとって、人間を見守るのは義理でしかないのかもしれない。

この世の地獄を煉獄に変えたいだけだったのかもしれない。

 

だが、俺はそれでも良い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺自身もそうだ。

 

運命か何か知らないが、それは他者や神が決めてしまうものではなく、自分で決めるものだ。

確かにそれも人間の欲望というものなのかもしれないが、人間である以上、人間が嫌になってしまったら、おしまいではないか。

 

 

 

 


 

「俺も決して忘れないよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「武村さん、この試合の次が貴方の試合です」

 


後輩の剣士が伝えてくれた。俺はゆっくり眼を開け、試合会場を見、竹刀を左手に持ち、右足からゆっくりと立ち上がった。

 


開かれた両目は、迷いのない凛とした美しさに満ちていた。

 

 

観客席には、エマも亮五もユンも、家族総出で俺の応援に来ているのが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

――エマ、亮五、ユン、そしてデニス、ホセ、マーカス、リニー、ありがとう。

エマたちが俺を支え続けてくれたから、今ここに生きて立っている。

慕ってくれる人々もいる。そして今、俺は父の防具を着てここにいる。

無論、今の俺の体格に直してもらった防具だが、違和感は全く感じない。

 

 

 

 

俺はエマやアリサのためにも、二度と父を憎まない。

 

父はアリサとともに俺を見守り、真の優しさを持つ者こそが真の強者であると、「仁義礼智信」を重んじ、慈愛に満ちた「惻隠の情」に満ちた祈りを続けてると今では信じることができるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

想いの鎧 ~『フロントミッション3』エマ編の未来のif~