人間の行為のなかで、
何がもっとも卑劣で恥知らずか。
それは権力を持った人間、
権力に媚を売る人間が、
安全な場所に隠れて戦争を賛美し、
他人には愛国心や犠牲精神を強制して戦場へ送り出すことです。
宇宙を平和にするためには、
帝国と無益な戦いをつづけるより、
まずその種の悪質な寄生虫を駆除することから始めるべきではありませんか?
『銀河英雄伝説』ヤン・ウェンリー
→査問会に出頭させられたヤンが、壇上の高官たちを痛烈に批判した言葉。
戦争に明け暮れた挙句に多数の国民を死なせて尚も体裁ばかり気にする自国の政治家達に対するこの上ない皮肉。
田中芳樹原作の小説『銀河英雄伝説』はアニメ版では声優陣の多さゆえに『銀河声優伝説』ともいわれるほどですが、人間の心の弱さを問題提起し、愛着が持てる人物でも全能ではない、という描写に共感できるのが『銀河英雄伝説』の長所ですね。
ヤンが守りたかったのは思想・主義・政体の多様性で、ヤン・ウェンリーは相当な毒舌家で毛嫌いする対象(人、事柄など)には拒絶を隠さない傾向があり、公然の面前でも平然と毒を吐き、権力者からは嫌われていますが、ヤン自身「軍人が政治権力を握ってはならないし、軍人を統率するものが軍人であってはならない」という民主共和制の根幹を成す「シビリアン・コントロール(文民統制)」の理念を愚直なまでに守り、いかに周囲に望まれようとも決して権力の座に立とうとはしなかったので、私も時には彼のように強く生きたいこともあります。
藤崎竜版『封神演義』の太公望のモデルはヤン・ウェンリーだそうです。
私にとっては政治権力というやつは
下水処理場のようなものさ。
無ければ困るが、
自分から近づきたいとは思わないね