管財人から会社から完全に離れるようにと連絡があった翌日。

管財人の所へ足を運びました。告げられたのは以下の内容。

・代表責任を取る形での辞任。
・会社にある私個人の貴重品を早急に出すこと。ただし、会社のものには手を触れないこと。
・辞任表明を書き、裁判所へ提出。

でした。

会社更生法は、経営陣を総入れ替えし、会社を守るためのものです。私への命令は当然のことです。しかし、困ったことが起きました。裁判所とは関係なく、銀行からの請求がはじまったのです。総負債額が11億とされましたが、ここも実は納得がいきません。最初の借入金はたしかに11億でした。が!5億は返済していたわけです。それがなぜ元にもどっているのか・・・。そして、銀行はさらに追い討ちをかけます。保証人への請求です。保証人となっていたのは、私の妻を含め、4名。個人がどうにかできるレベルではありません。

銀行はそれでも迫ってきます。つまり・・・自己破産をすることを要求しているのです。

私はともかく、他4名はなんとかして欲しいと頼みました。帰ってきた返事は、

「いくらかお金をいただければ、保証人は解除してもよろしいですよ?少しでも返してもらえればいいのですから。ただし、あなたには責任をとっていただきます。」

その少しというものが、個人にどれほどの負担となるのか。ここでいう少しというのは百万単位なんです。

失敗した私の責任なので、銀行にはいいようにされてしまいます。

現在、保証人を解除する手続きを進行していますが・・・先行きは暗いです。

客数0の日まででる始末となり、社員の生活が心配になります。

今までお世話になった営業先へ出向き、変わらぬサービスを提供していることを伝え、是非利用して欲しい旨をお願いしました。

私が営業に外出しているときも、心無い電話に社員が傷つけられていると思うと、世の中を呪いたくなりました。

一番付き合いが深い業者さんの社長さんを尋ねてお願いをしていたとき、社長さんが

「大変やな・・・。せやけどな、社長。呪わば穴二つというで。誰も呪ったらいかん。誰も、何も呪ったらいかん。全部自分と、自分の大事なものに降りかかるんやで。今は苦しいかもしれんが、あんただけやない。それよりもや。給与が心配になるような状態なのに、笑顔で働いてる社員に感謝をせないかんで。わしさっき行ってきたんじゃ。みんな明るく出迎えてくれたで。お金払うってゆーとるのに、受け取らへん。わしはな、あんたがうらやましいで。」

そのお言葉を聞いて、目が覚めました。もはやこれ以上悪くならないのだから、前を見据えていかなければ。


社長さんにお礼をいい、会社に戻ると、社員がかけよってきました。

「ついさっきなんですけど、ご予約を頂きました!!9件もですよ!!予約のキャンセルまであったのに、うそみたい!!」

おどろきました。そして予約元を見てみると・・・影ながら応援してくれる業者の方たち。そしてあの社長の支店でした。

これで・・・給与は出せる・・・。

泣きそうでした。社員達は

「やっとお客さんとお話できますね。さ、がんばろ!!第一陣は3日後ですよーー!!シャァ!!」
「猪木!ボンバイェ!!ボンバイェーーー!!!」

みんな、素晴らしい社員たちです。


しかし、喜びもつかの間でした。一本の電話がなり

「管財人です。○○さん。あなたの身の振り方ですが・・・申し訳ないのですが、裁判所より命令が下りました。その施設での業務引継ぎも結構です。あなたは会社への立ち入りを遠慮していただくことになりました。詳しくは会ってお話しますので、明日にでも私の事務所へ来てください。」

やはり来たか・・・そう思いました。


毎日200人以上が利用していた当社。会社更正法の発動により、マスコミに倒産したと報道されたことが影響をみせはじめました。


客数0

まさかの0です。社員も泣きそうでした。

心ない電話もかかってきました。
『あー潰れた○○さん?あんた係の人かね。ちょっとその施設がある場所に店を作りたいんだがね。管財人をだしてくれないか?』

お客様ではなく、常識もマナーもない人からの電話を応対する。これは・・・今我々ががんばる意味があるのか。疑問が浮かびました。