タイトル「森ガールと盛りあガール」 7 | 可愛い君に愛を囁きたい

そして桃花は大学生になった。

地元を離れて、都会の大学生になった。

当然といえば当然。

だって私は頭がいいんだから。

だから誰も驚きもしなかった。

当然そうなるだろうと、みんなが思っていたからだ。

 でもみんなの発言に共通してたこと。

 それは……。

「でも、どうして東大、落ちたの?」だった。

 答えは簡単だ、モテたいからだ。

 試験をわざと間違えて書いたからだ。

 そしてモテ女子がいっぱい通う、セレブが集う私立大学を滑り止めでうけたのだ。

 もちろん、おちるわけがない。

 こうして私は有名私立大学の法学部法学科に合格した。

ただ法学部を選んだせいで、将来は弁護士ね、とかおとうさまも後継ぎができて良かったね、とか言われるのが、少し面倒くさかった。

法学部を選んだのはなんとなくで、弁護士になる気なんかさらさらない。

大学はみんなが行くから行くみたいな気持ちしかない。

ただ親友たちと別れるのは少し寂しかった。

「東京に行ったら、本気でミュージシャン目指すんでしょ」

送別会の日、みんなに聞かれた。

「もちろんよ」

「有名になっても私たちのこと忘れないでね」

「バンド解散したんだっけ?」

「バンドのメンバーを探さないとね」

「やっぱりヘビメタなの?」

「うーん……、まだ分からない」

そんな見送られかたをしたのにもかかわらず、私の気持ちの中に、メタルはなくなっていた。

メリケンサックのような指輪はもうしない。

耳にあけたピアスだって、もうしない。

桃花はその時密かに決意を固めていたのだ。

私は東京で、誰も知らない東京で、森ガールに生まれ変わるのだと。

周りに私を知ってる子がいない。

地元のみんなは地元に残る子ばかりで東京に出てくる子なんていない。

桃花と同じ都会の大学に受かった子はいない。

それが桃花に転機をもたらした。

ギターより、男でしょ。

キラキラした恋愛したいじゃない。

だって、私はモテタガール。

男性経験はないけれど、繊細な指使いが必要なギターでみんなを痺れさせてるんだよ。

私の指がギターを捨てたら、どんなに男子を痺れさせれると思うの。

よくギタリストがギターを弾いてるうちに自分に酔いしれてエクスタシーを感じるという。

確かに気持ちいいと感じることがある。

高音が突き抜けていく感じ。

思わず体がエビゾリになってしまう。

脳天まで稲妻が駆け抜けていく、そんな感じ。

確かにそれは快感だ。

でも桃花はギターを弾いて感じるエクスタシーは男性的だと感じていた。

私はやっぱり女子だし、男が好きだし。

そう、ぶっちゃけ、女子にモテるより、男子にモテたいじゃない。

モテるためなら、森ガールにだってなるわよ。

モテるためなら、メタルだって捨てる。

そう教わった初恋。

私をふった大樹。

やつから人生で大切なものは何か教わった。

そう、女はモテてナンボや。

ギターが弾けたって、男から怖がれるような生き方は辛すぎる。

私は森ガールになる。

私のことなんか誰も知らないこの東京という大都会で、森ガールになってやろうじゃないの。