鈴音にはゆるぎない目標があるのだ。
それはオリンピックに行くことじゃない。
そう、今は鈴音の好きにさせよう。
畠山はそう思った。
鈴音を支えてるのは、鈴音自身じゃないのだ。
鈴音は沙希という一人の少女のために
練習に励み、4回転ジャンプを跳ぼうとしている。
だとしたら、それを見守るしかないだろう。
そうしないと、鈴音は心が折れ、
きっとまたスケートから逃げ出すに違いない。
畠山は覚悟をきめた。
4回転ジャンプを練習する中で
オリンピックへの道が見えてくるかもしれない。
それが遠回りでも、鈴音のためにそうしようと。